学校のシンボル、これからもずっと…校庭のヤマザクラ、苗木植樹で後世へ 新座で「桜満開プロジェクト」

ヤマザクラの苗木を植樹する田巻隆平さん(左)と児童代表の5年生石川遥太さん=新座市立池田小学校

 埼玉県新座市立池田小学校(鶴田千尋校長、児童数466人)校庭の真ん中にそびえるシンボルツリーのヤマザクラから育てた苗木の植樹式が、同校で行われた。新座市は小、中学校のソメイヨシノが老齢期を迎えていることから、長命なヤマザクラを植えることにより、市内の学校に桜が咲く風景をよみがえらせる「桜満開プロジェクト」に取り組んでおり、植樹は同プロジェクトの第1弾。同市は「苗木を順次育て、子どもたちを見守り続けるサクラを後世に残したい」としている。

 同小学校は1973年に創立し、今年で50周年。敷地は元農地で、校庭中央のヤマザクラは、当時、畑を耕していた同市の田巻隆平さん(79)が高校卒業した直後の63年ごろ、植樹した。その後、農地を購入した市がヤマザクラをそのまま残し、同校を開校した。

 今年で植樹から約60年。この間、毎年4月には校庭の中央で見事な花を咲かせ、児童や教諭らの心に刻まれるシンボルとなっている。ただ、数年前から枝が枯れたり、根元にキノコが生えるなど老齢化が進んでおり、樹木医からは「あと数年で枯れる」と診断されている。

 市内小、中学校の寿命50年とされるソメイヨシノは老齢期を迎えており、市は樹齢100年とされる池田小のヤマザクラの維持管理を進め、挿し木により育てた苗木を市内の各校に植樹しようと、市は20年にクラウドファンディング(CF)を実施し、220万円の寄付を募った。

 CFの目標額が集まり、市は、同校のヤマザクラの維持管理をはじめ挿し木による苗木の育成などに取り組んでいる。

 同校によると、19年に根っこの成長を阻害していたヤマザクラの根元に囲っていたブロックを除去し、菌を繁殖させないように薬をまくなどの保全活動に努めている。また、枝から挿し木100本を作り、3本が苗木に成長。このうち1本を新たなヤマザクラとして植樹した。

 植樹式には、同校の5、6年生と市長や教育長、60年前にヤマザクラを植樹した田巻さんらが出席。同校庭東側のプール脇で、児童らと共に約2メートルの苗木を植えた。

 児童代表の6年白幡大希さんは「校庭の中央から見守ってくれるヤマザクラと共に成長した僕らの心には、いろいろな思い出が刻まれています。病気の時は心配しましたが、プロジェクトのおかげで元気を取り戻しつつあり、新しい桜もシンボルとして大切にしたい」などとあいさつ。

 田巻さんは「当時は、農作業の途中で日陰で休めると思ってヤマザクラを植えたんです。こうして大事にしてもらって大変うれしい。今後もできるだけ長く、子どもたちのシンボルになってもらえれば」と感慨深げだった。

新座市立池田小学校のシンボルツリーとなっている約60年前に植樹されたヤマザクラ

© 株式会社埼玉新聞社