新型『トヨタ・カローラGRS TCR』初号機納入。豪州の古豪GRMはプジョーと次期型開発契約を締結

 昨季2022年のTCRサウスアメリカ・シリーズ終盤3戦に“TOYOTA GAZOO Racingラテンアメリカ”として新型『トヨタ・カローラGRS TCR』を投入したTOYOTA GAZOO Racing アルゼンティーナ(TGRA)は、本格デリバリー初年度で最初のカスタマーとなるパラディーニ・レーシングに、記念すべき初号機を納入。一方で、そのカローラ上陸も噂されるTCRオーストラリアに参戦する古豪ギャリー・ロジャース・モータースポーツ(GRM)は、フランス本国のプジョースポールと新たな契約を結び、次期型TCR車両の開発と製造を請け負うことがアナウンスされた。

 アルゼンチンはコルドバに本拠を構えるトヨタ・チーム・アルゼンティーナ(TTA)は、昨年7月にもTCR規定を統括するWSCグループのホモロゲーション認証作業を終え、今季2023年より「都合10台のカローラGRS TCRの製造」を予定。準備デリバリーを開始する方針を示していた。

 その新型『トヨタ・カローラGRS TCR』を走らせる最初のカスタマーとして名乗りを挙げていたパラディーニ・レーシングは、今季のTCRサウスアメリカに向け、同国のトップカテゴリーであるTC2000(旧スーパーTC2000)経験者のファビアン・シャナントゥオーニと、昨季のTCRでもタイトルを争ったファン-アンヘル・ロッソの2台体制を敷く。

 さらに“本家”TTAも今季のTC2000ではホンダ陣営に所属するベルナルド・ラヴァーをエースに据え、その僚友に同じくアルゼンチン出身のWTCR世界ツーリングカー・カップ経験者、ホセ-マニュエル・サパーグの起用を発表済み。まだ体制未発表の2台を加え、製造される全10台中6台が2023年TCRサウスアメリカのグリッドに並ぶ見込みだ。

 一方、オーストラリア大陸では25年以上の歴史を誇り、同国を代表するツーリングカー選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップでも活躍。2000年には聖典『バサースト1000』制覇も達成したGRMは、プジョーのモータースポーツ活動を担当するフランス本国の部門と新たな契約を結び、新型『プジョー308 TCR』開発の全権を委任されることとなった。

 この新契約は、現在GRMのチームマネージャーを務めるバリー・ロジャースの指揮で行われ、創設者ギャリーの息子でもあるバリーは、現行型の308 TCRを走らせる地元シリーズの主催者の一員としても名を連ねている。

コルドバに本拠を構えるTOYOTA Team Argentina(TTA)は、昨年7月にもTCR規定を統括するWSCグループのホモロゲーション認証作業を終え、今季より「都合10台のカローラGRS TCRの製造」を予定する
パイロットシーズンとなった2022年は、新鋭ホルヘ・バリオのドライブでポールポジションと勝利も獲得している
TCRサウスアメリカ向けの6台は3月末にも完成予定。順次、製造が続けられる残る個体は、オーストラリアへの上陸が噂される

■P5型プジョー308 TCRの本格デリバリーは「2024年に開始したい」

「我々はここ数年、フランスのプジョー・スポールと素晴らしい関係を築いてきた。その上で昨年来、本国側と話し合いを始めており、そんななかで新型の308が市場にデビューしたんだ。その新しいロードカーはオーストラリアの路上も走り始めているし、私自身もハイブリッドを仕事で使用して味見したよ。クルーたちは今後の仕事に備え、各部の構造を確認したりもしていたね(笑)」と明かしたロジャース。

「そして先週、プジョー・スポール側から、新車の開発とホモロゲーション登録の作業を進めていくというゴーサインをもらったんだ。とても楽しみだし、それはGRMのすべての従業員にとってモチベーションになる。かつてはここで(現地最速シングルシーターの)S5000を開発し、18台もの車両を製造したし、それ以前には(スーパーカー用の)ボルボも製造していた」と続けたロジャース。

「我々は高品質のレースカーの設計、製造、組み立てにおいて素晴らしい歴史を持っている。プジョーのような世界的ブランドと取引できることは、私自身、本当に誇りに思っていることだ」

 今季のTCRオーストラリアでも3台の現行モデルを走らせ、うち2台は“プジョー・スポール・チーム・バルボリン”のエントリー名で参戦するGRMだが、2018年にTCRデビューを飾ったT9世代の後継として、新型となるP5世代は「2024年にも本格デリバリーを開始したい」という。

「このようなプログラムでは、最初から10台以上の車両を製造する必要がある」と続けたロジャース。「我々は現在、生産ラインを稼働させており、かなりの量の設計作業を行っている。新型モデルを2024年の初めにはリリースしたいと考えているんだ」

「プジョーからのプレッシャーは、彼らが必ずしも『新たなシーズン開幕に向け、確実に準備ができている必要がある』というものではないが、内部的には来季のこの時期に(開幕戦)タスマニアで走らせることを目指したいと思っている。 我々は頭を下げ、全身全霊、お尻に火がついた状態で燃え尽き、その仕事に飛び込みたいと思っているよ!」

現在はスーパーカーへの関与を休止し、TCRオーストラリアでの大所帯を形成するGRM
フランス本国のプジョースポールと新たな契約を結び、P5世代ベースの次期型TCR車両の開発と製造を請け負うことがアナウンスされた
「とても楽しみだし、それは GRMのすべての乗組員にとってモチベーションになる」とチームマネージャーを務めるバリー・ロジャース

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