北陸新幹線が来たら福井―大阪・名古屋間は乗り換えマスト…料金、時間は? 道半ばの整備計画に不安と新たな期待

【グラフィックレコード】乗り換えはマスト
北陸新幹線敦賀駅の2階コンコース。乗り換えなどのため19台の自動改札機が設置される=2月16日、福井県敦賀市木ノ芽町

 「結局、大阪まで行くときはどうすればいいの?」。JR武生駅近くに住む福井県越前市の40代女性は年に数回、特急に乗って、関西の専門学校に通う長男を訪ねる。北陸新幹線が福井に来た後はどうなるのか、よく分かっていない。

 現在、福井―大阪間の特急の最短時間は1時間51分で、自由席料金は5610円。福井―名古屋間は2時間10分、5280円で、どちらも乗り換えなしで行ける。しかし、新幹線延伸後は嶺北からは敦賀で特急に乗り換えなければならない。敦賀駅までは北陸新幹線か、延伸に伴いJR北陸線を引き継ぐ並行在来線「ハピラインふくい」を使うことになる。

 敦賀駅で新幹線と特急を乗り継ぐ場合、福井県が2021年に出した試算によると、福井―大阪間の所要時間は1時間47分(乗り換え時間10分込み)で、料金は6210円、福井―名古屋間は2時間6分(同)、5880円。時間は今とほぼ同じで、料金は600円ずつ上がる計算だ。越前たけふから関西・中京に新幹線と特急を乗り継ぐ場合は、敦賀までの料金が割引され、現行より安くなると県は試算している。

 仕事で関西・中京方面に行く機会が多いという鯖江市の眼鏡会社社長(59)は「社員は越前市の新幹線駅を利用することになると思うが、一日何本止まるだろうか」と不安がる。

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 建設中の新幹線敦賀駅は3階建てで3階に新幹線、1階に特急が乗り入れる。2階コンコースには整備新幹線駅で最大の19台の自動改札機を設置。ハピラインは現在の敦賀駅に入るため、新幹線駅までの移動距離60メートルには動く歩道が導入される。JR西日本の担当者は「乗り換えによる利用者の負担をより少なくした」と話す。

 ただ「3階から1階の上下乗り換えも、楽とは言えない」と指摘するのは鉄道ジャーナリストの梅原淳さん。「ほかの駅では同じホームの片側に新幹線、もう片側に在来線の特急を停車させているケースもある」とする。越前市の50代会社員は関西の行き方について「京都ならばハピラインで敦賀に向かい、同じ駅から乗る新快速に乗り換えるのが安くて一番楽かもしれない」と思案顔だ。

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 北陸新幹線を大阪までつなげるという国の整備計画は道半ば。敦賀以西は今春の着工が見送られ、全線開業の道筋は見えない。NPO法人「ふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)」の清水省吾さんは「北陸新幹線は大阪までつながるのがあるべき姿」と訴える。

 一方、当面は北陸新幹線の終着駅となる敦賀市にとっては誘客の好機。22年9月、JR敦賀駅西地区エリアに「otta(オッタ)」がオープンした。約3万冊をそろえた公設書店をはじめ、港町ならではの海鮮丼やフィッシュバーガーの店が連なる、交流とにぎわいの拠点だ。

 弁当製造販売の「気比の里」は敦賀で取れたマダイやへしこのすし、敦賀で加工した昆布などを詰めた弁当を試作。3月中旬ごろからの販売を予定し、延伸後は駅構内で売りたい考え。大島昇治社長は「駅から出ない乗り換え客にも、気軽に敦賀のグルメを味わってほしい」と意気込む。

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