【規制改革会議】訪看STへの薬剤配置で“遠隔管理”案が浮上

【2023.03.07配信】内閣府は3月6日、規制改革推進会議「医療・介護・感染症対策ワーキンググループ」(WG)を開催し、「訪問看護ステーション(訪看ST)へ配置可能な薬剤の対象拡充について」を議論した。この中で、専門委員から実施にあたってのスキーム案が提示された。薬局の薬剤師がオンラインによって訪看STに設置した遠隔倉庫を遠隔管理し、随時授与するなどとした。

WG専門委員である落合孝文弁護士(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)と、佐々木淳医師(医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長)は共同で、実施にあたってのスキーム案を資料で提示した。

案はA案とB案の2つを提示。いずれも訪看に“遠隔倉庫”を設置する形だが、A案は薬局の薬剤師がオンラインによって訪看の遠隔倉庫を遠隔管理し、随時授与するとした。B案では医薬品の安全管理責任者は医療機関(医師)が担い、訪看に設置した遠隔倉庫に関して「医薬品の安全使 用のための業務に関する手順書に基づき管理」するとした。加えて「配置可能薬剤の拡充の検討に先立ち、提案者の要望する薬剤それぞれについて、飲み合わせその他の具体的危険の有無が厚労省から示されることが建設的議論に有用ではないか」と提案した。資料には、「2020年度現在、無薬局町村は34都道府県で136町村」とも指摘した。

さらに専門委員の大石佳能子氏(株式会社メディヴァ 代表取締役社長)も、同問題に関して資料を提出。「訪問看護ステーションに配置できる薬剤が限定されていることにより患者へ最善のケアが出来ないことは従来から公知の事実である」と指摘。「これまで連携によって解決することが求められていたが、24時間営業を行う薬局が近隣にあるケースは少なく、連携だけで解決できないことも明らかである」と現状を問題視。その上で「日本は国民皆保険の元、同一の医療が、どこでも受けられることが保障されているはずである。これ以上、連携に頼る、またその実態を調査する等によって患者に不利益を与え続けることは許されることではない」とし、具体的な手法については、「処方箋の流れなどが問題であれば、在宅医療現場では処方箋の写真を送り先に薬を届け、その後紙の処方箋をやり取りするなどの DX 化された取組みが既に実装している。例えば、当院の場合は 10 年ほど前から実行している。新しいテクノロジー(というほどのものでもないが)を活用する方法を含め、考えてほしい」と指摘した。また、「ちなみに、診療所内では医師の監修のもと、看護師が院内薬局でのピッキング、調剤を行っている。医師からの電話等の指示があれば、それと同等と考えるべきではないだろうか。いずれにしても、待ったなしの問題と考えている。もしもそれに関連する診療報酬上(コス ト負担)の問題もあれば、併せて早急に解決願いたい」とした。

なお、厚労省は「在宅療養の処方において、薬剤師の専門性に基づいた処方内容の薬学的分析や服薬指導、調剤後フォローアップ、処方医への報告の実施により安全な薬物療法が提供されている」との見解を示し、具体的な薬剤師対応例を提示した。

編集部コメント

本紙では同問題において、「具体的な医薬品購入、それに伴う不動在庫など、経営的な負担について訪看はどのような見解なのか」に課題意識を持ってきた。今回提示の案では訪看は薬剤を保有しないといえ、経営的な負担を回避する案と見受けられる。

ただ、このスキームは現実問題として、いくつかの問題点が指摘できる。実際の薬剤の使用と在庫には差異が生じ、不動在庫や欠品、返品が薬局ですら生じているのが現実である中で、薬剤の保管場所を増やすことは、そのすべての作業で重複や無駄を生むことになるからだ。「使うか分からない薬剤を訪看まで誰が運ぶのか?」「返品になった場合は誰が訪看まで取りにいくのか?」「廃棄薬剤の損失は誰が負うのか?」などの課題があるだろう。

訪看の場にも「薬剤があったら」という率直な経験談には共感できる面もあるが、薬剤は“モノ”の受発注や移動が伴うだけに、何が地域社会において最も合理的なのかの議論は慎重に進めるべきだろう。それでなくとも、医薬品の供給問題だけでなく、医療費の無駄の点検や運輸業界での働き方改革も指摘されている中にある。

翻って、薬局業界においては、地域の拠点的な薬局の整備や、あるいは薬局間連携による薬局機能の向上に向けた施策が進められている。これらは、そもそも訪看に薬剤を置くべき理由として多く挙げられた「地域の薬局の24時間体制の構築」につながるものだ。こうした施策も合理的なものとして、目を向ける価値はあるのではないだろうか。

他方、そのためにも今回、専門委員が指摘した「無薬局町村」への対応、あるいは不足しているのであれば「24時間対応の薬局体制」の対応については薬局の責任として、整備を急ぐ必要に迫られているといえそうだ。

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