「5秒のストップ&ゴーを受けたらもうレースは終わったようなもの」オコン、3度のペナルティで戦えず/F1第1戦

 アルピーヌのエステバン・オコンは、バーレーンでのF1開幕戦でポイント獲得を目指していた。しかし、異例のペナルティを何度も受けたことでオコンのレースは破綻してしまった。

 土曜日の予選でトップ10に入ったオコンは、目標達成に半ば成功したかのように思われた。しかしオコンの苦難はスターティンググリッドに並んだ直後から始まっていた。オコンの知らないうちにスチュワードが確認していたのだが、マシンの右前輪が9番グリッドの停止位置をやや越えていたのだ。

「ほかにも4台のマシンが(グリッド枠から)出ていた」とレース後にオコンは主張した。

「僕だけがラインを越えていたのではない。いちばんはみ出していたのは確かに僕だ。しかし他にもいた。そこが納得できない」

 オコンは、第1スティントもかなり進んだ時点で、その違反により5秒のタイムペナルティが科されたと通告された。スタート直後の数周でフロントウイングのエンドプレートにダメージを負っていたので、チームにとっては、オコンのペナルティを消化しつつパーツの交換も行う機会が訪れた。

 ところがアルピーヌのチーム代表オットマー・サフナウアーによると、ある「システムエラー」が起きたことで、ピットクルーが4.6秒(スチュワードによる計測)でマシンのフロントウイング交換に取りかかってしまった。つまり、ペナルティによる5秒間の活動不可時間が過ぎる前に作業を開始してしまったのだ。

「作業を開始した時点で残り0.5秒あるかないかだったと思うが、計時にちょっとした問題があった」とサフナウアーは語った。

「メカニックのイヤホンを通じて、作業を開始できるまであと何秒かカウントダウンして知らせるシステムを採用しているのだが、それが誤って0.4秒ほど早く設定されていた。それでシステムが混乱してしまった」

 結果としてオコンは、チームの作業時のミスにより10秒のタイムペナルティをスチュワードから追加されてしまった。そのペナルティを消化するにあたり、オコンは不用意にもピットレーンのスピードリミッターを早く解除しすぎてしまい、時速80kmの速度制限を時速0.1kmほど超えた。それによりさらに5秒間のタイムペナルティが科されることとなった。

「これはドライバーに問題があった。マシンにはピットレーンスピードリミッターが付いている。ピットレーンを抜けたと確信を持った時点で解除し、そこから加速するべきだ」とサフナウアーは述べた。

「オフにするのはピット進入時も可能だが、オフにするのがほんの少しでも早いと、オンにするのが遅くなり、それでお終いとなってしまう」

 オコンはこのときもスチュワードの判定に困惑した。

「この5年間、ピットイン時もアウト時もピットレーンスピードリミッターを同じように操作した。それなのにペナルティを受けた」とオコンは話した。

「スタートポジションについても、昨年1年間同じようにしてきたが、ペナルティを受けたことはなかった。だから今回のようなペナルティは新たな方策ということなのだろう。うまく対応する必要がある」

 度重なるペナルティを受けるうちに、フラストレーションがつのり集中力を維持するのが難しくなったとオコンは認めた。最終的にアルピーヌは、41周が経過した時点でオコンをリタイアさせる決定を下した。

「もちろん、できる限り集中力を維持しようと努力した」とオコンは語った。オコンはミドルスティントでマクラーレンのランド・ノリスとバトルを展開し、最下位脱出を試みた。

「だが、わかると思うが、5秒のストップ&ゴーを受けたらもうレースは終わったようなものだ」

「通常は僕たちチームは、運用や作業に極めて優れている。細かいところまで気を配り、ペナルティを受けないようにしている。しかし今日はすべてがうまくいかなかった。分析を行い、さらに強いチームとなって戻ってくる必要がある」

2023年F1第1戦バーレーンGP エステバン・オコン(アルピーヌ)

 サフナウアーも、当日のアルピーヌのオペレーションミスは普段の規律正しさや几帳面さにそぐわないものだったと同意した。だが、そんななかにあってピエール・ガスリーが精気に満ちたドライビングを見せ、グリッドの最後方からスタートし9位でフィニッシュしたのは慰めになるとしたサウファウアーは語った。

「我々チームが今回のようなオペレーションミスを犯すのはきわめて稀なことだ。フライングしてマシンの作業に取りかかるなどということは、これまで一度も起きたことがなかった。そうしたことが起きないように優れたシステムを導入している。だから、今後は二度と起きないと確信している」

「エステバン(・オコン)がスタート時にポジションをはみ出していた件については、今回でよく学んだ。これも二度と起きないだろう。したがって、オペレーション面では円滑でトラブルフリーのレースが今後は期待できる」

「それがうまくいき、ピエール(・ガスリー)が予選で行けるところまで行って2台ともトップ10以内に入ることができれば、多くのポイントが獲得でき、4位争いに食い込むことができるだろう」

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