福井県と軽井沢もっと近くなる 在宅医療、温泉付き別荘購入…北陸新幹線で直通2時間強、つながる2拠点

【グラフィックレコード】地方をつなぐツール
医療法人社団オレンジが開設した「ほっちのロッヂ」と紅谷浩之医師。福井との2拠点で在宅医療に取り組む=2月4日、長野県軽井沢町発地

 「避暑地の軽井沢は、町全体が“屋根のない病院”って呼ばれているんですよ。台風が来ないので気圧の変動も少ない。医療的ケア児って台風前に気圧の変化で体調を崩しやすいんです。あの子たちを連れてきたらすごくハッピーなんじゃないかって」。医療法人社団オレンジ(福井県福井市)は2020年4月、長野県軽井沢町発地に「ほっちのロッヂ」を開設し、福井との2拠点で在宅医療に取り組む。

 理事長の紅谷浩之医師(46)が軽井沢に初めて立ち寄ったのは、長野県での講演に招かれた14年。当時は北陸新幹線東京―長野間が「長野新幹線」として部分開業し、福井から軽井沢は東京経由で5~6時間かかっていた。新幹線金沢開業は15年3月。医ケア児に日頃できない遠出をして思い出をつくってもらいたいと、その年から毎年のように軽井沢へ行き、医ケア児が気球に乗るイベントを企画した。そして診療所、病児保育、訪問看護などの機能を備えた木造施設を建てた。

 スタッフ約20人のうち5人ほどが福井と行き来し、紅谷医師も1カ月のうち軽井沢で3週間、福井1週間の割合で在宅医療などに当たっている。新幹線が福井にやってくると両区間は2時間強で結ばれる。新幹線内の車いすスペースや多目的室は広く、医ケア児や高齢者らも移動しやすい。「高齢者が車いすで軽井沢へ旅行したいときに持病があって不安でも、2拠点に医療チームがあるからこそ相談に乗れる」と紅谷医師。「新幹線は地方と地方をつなげるツール」と捉える。

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 北軽井沢(群馬県嬬恋村)の6階建てリゾートマンションの一室を中古で購入し、福井から往来する人もいる。温泉巡りが趣味の福井市の74歳男性は、定年退職後の余暇を楽しもうと2013年、2Kを220万円で購入。妻と一緒に月に1週間ほど滞在している。源泉掛け流しの大浴場、露天風呂があり、窓からは浅間山が見える。

 福井から軽井沢までの特急と新幹線の料金は2人で往復5万円以上もかかる。だから今は車で6時間ほどかけて通っている。男性は「後期高齢者は安くする、高速道路のように土日は割り引く、回数券を出す、自由席をもっと安くする、といったサービスを設けてもらえたら新幹線が身近になると思う」。

 軽井沢観光協会の土屋芳春会長(67)によると、15年の金沢開業後は富山、石川からの観光客や別荘購入の引き合いが増えた。首都圏の人や軽井沢町民も含めて、軽井沢をハブ(結節点)に行動範囲が広がったという。

 福井県と軽井沢町は22年3月、連携協定を締結した。土屋会長は「軽井沢は健康に良いウェルネスリゾート。幸福度が高い福井と地方同士で協力し、人流をつくっていきたい」と話している。

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