7メーカー参戦のWEC、開幕を前にル・マン24時間を含む前半4戦分のハイパーカーBoPが決定

 WEC世界耐久選手権は、2023年に開催100周年を迎える第91回ル・マン24時間レースを含むシーズン序盤4戦における、ハイパーカークラスのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)テーブルを発行した。

 3月11~12日にアメリカ、フロリダ州のセブリングで行われる開幕前のWEC公式テスト“プロローグ”の実施に先駆けて公開された文書では、ふたつのBoPテーブルが示された。ひとつは来週15日(水)から17日(金)にかけて開催される今季開幕戦セブリング1000マイルをカバーし、もうひとつはポルティマオ、スパ・フランコルシャン、ル・マンの3レースをカバーするものだ。

 Sportscar365はポルティマオ、スパ、ル・マンで適用されるBoPテーブルのデータが固定されていることを理解している。つまり、セブリングの結果に第2戦以降の性能調整が影響を受けないということだ。BoPの文書には、BoPの情報は「追って通知があるまで」適用可能であることが記載されている。

■純ハイパーカーとIMSA生まれのハイパーカー“LMDh”が、初めて同じレースに登場

 フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウウェイで行われる2023年シーズン開幕戦では、四輪駆動のハイブリッド車またノンハイブリッド車であるル・マン・ハイパーカー(LMH)が、リヤアクスルを駆動するハイブリッドを搭載したLMDhカーと初めて競争することになる。

 LMH規定車はトヨタGR010ハイブリッド、プジョー9X8、フェラーリ499P、ノンハイブリッド車のグリッケンハウス007 LMH、ヴァンウォール・バンダーベル680の計5車種。LMDhカーはポルシェ963とキャデラックVシリーズ.Rの計2車種だ。

 BoPテーブルには、これらのクルマに対して設定される最低重量、最大出力、スティント中のエネルギー使用量など、さまざまなパラメーターが含まれる。

 セブリングでの最低重量は、ハイブリッドシステムを搭載した3台のLMH車両がもっとも重く、中でもトヨタGR010ハイブリッドが1062kgで最重量に。前年のチャンピオンマシンに次いで重いのが新登場のフェラーリ499Pで1057kg、昨シーズン途中から参戦し、今年は2年目のシーズンを迎えるプジョー9X8は1049kgとなっている。

 デイトナ24時間レースでデビューしたポルシェ963は1048kgでもっとも重いLMDh車となり、キャデラックVシリーズ.Rはこれより10kg軽い。もっとも軽い2台は、グリッケンハウスとヴァンウォールのノンハイブリッドLMH勢で、いずれも規定の下限値である1030kgとされた。

 第2戦ポルティマオ、第3戦スパ、そして第4戦として行われるル・マンでは、2台のノンハイブリッドLMH車両に変更はないが、他の車両はミニマムウエイトが減少する。もっとも大きな違いは、フェラーリが17kg、トヨタは19kg軽い状態で開幕後の3戦を戦える点だ。

 また、プジョーはセブリング比で7kg軽くなり、ポルシェとキャデラックのLMDh勢は3kgの重量減が決まっている。

リヤウイングレスのハイパーカー、プジョー9X8 2022年WEC第5戦富士

■1.0~1.2秒の追加ピット作業時間が設定

 マシンの最低重量が、開幕戦と以降3戦のテーブルで各モデルの間に開きがある一方、最大出力の項目は開幕戦と同様に、全車が約15馬力の範囲に収まっている。

 ピポ・モチュール製のエンジンを搭載するグリッケンハウス007 LMHは520kW(約707ps)が許可される。これは全車の中でもっとも高い数値だ。対してもっとも低い数値はヴァンウォール・バンダーベル680の511kW(約694ps)となっている。

 セブリング後の注目すべき変更点は、フェラーリ499Pの6kW(約8ps)、トヨタGR010ハイブリッドでは約7psとなる出力減少だ。

 前シーズンの最終戦バーレーン以降、トヨタは1スティントあたり12MJのエネルギー追加を認められ、プジョーも1MJ追加された。しかし、セブリングからヨーロッパでの3戦の間にトヨタとフェラーリは9MJの削減、他社のクルマは微量の下方調整が行われる。

 ハイブリッドLMHのモーター作動速度は前年から踏襲された。具体的にはプジョー9X8が150km/hから、トヨタGR010ハイブリッドも引き続き190km/hからとなっている。新車のフェラーリ499Pもトヨタと同じく190km/h以上で四輪駆動となる。

 ハイブリッドの展開速度の違いはタイヤサイズと関連している。トヨタとフェラーリが、フロントとリヤで異なるサイズのミシュランタイヤを装着する一方、プジョーは四輪ともすべて同じサイズのものを使用している。

 水曜日に公開されたハイパーカーのBoPテーブルには、各チームが燃料補給の際に守らなければならない余分な“ドッキングタイム”を示す項目が新たに設けられた。これによるとLMHハイブリッド車は1.2秒、LMDhカーが1.0秒、LMHノンハイブリッド車については0秒が設定されている。

 なお、セブリング向けのBoPは今週末の公式プロローグテストと、来週のレースウイークの両方に適用され、ふたつのイベント間での変更は認められていない。

ポール・リカールでテストを行う2023年仕様のトヨタGR010ハイブリッド
ハーツ・チーム・JOTAが2023年のWEC世界耐久選手権で走らせるカスタマー車両のポルシェ963

© 株式会社三栄