このご時世に…福井の集落地図の看板はなんとフルネーム入り 同じ田舎の秋田にはないんですけど…【福井県立大学生コラム】

福井県内の集落の地図を載せた看板。各戸に家主の名前がフルネームで記されていた
秋田県内の集落の地図を載せた看板。名前は載っていない。

福井に来るとやたらと見る看板。そこの地区の地図を描いているものだ。どこかに行けばそこの地区の地図が大々的に公表されている。初めて来た人にはとても親切な看板だ。しかし、私はその看板をみて非常に驚いた。その看板はどこか妙なものを感じるのだ。

そこに書かれているのは道なりや建物だけがかかれているのではない。なんと、そこに住んでいる人の名前、しかもフルネームで公表されている。確かに今まで地図は目にしたことはあった。しかし、フルネームで名前を書かれているのを見るのは経験上初めてのことである。少なくとも私が今まで住んできたところにはなかった。「え、これ大丈夫なの?」。疑問に思うと「田舎だし、誰も悪用する人なんていないよ」と言われる。非難している様子は見られなかった。

こんなにプライバシーを叫ばれる現代においてこのような看板を目にしたことに驚いた。何人かに聞いても田舎だから心配ないと言い、特に気にする様子もない。「田舎だし……?」私はこの言葉に引っかかった。私自身、秋田県の田舎出身であり、さらに今まで東北各地での移転を繰り返してきたため田舎の風景は飽きるほど見てきた。

⇒【写真】秋田県内の集落地図の看板

しかし、この妙な看板を置く田舎の風景は初めてである。福井にこの看板が存在するのはその存在についてあまり意識してこなかっただけなのか、それとも周りの人を信頼しているからこそできることなのか。このことから私は福井の人は小さいことは気にしない人だと勝手に認識してしまった。それと同時に頼もしくもみえてきた。(大塚柚希)

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 ゆるパブコラムの「編集長」を務める若新雄純さんが福井県立大学で行った講義「福井の文化と社会」で、受講した大学生たちがコラム執筆に取り組みました。今回のコラムは、その中から厳選した作品を掲載しています。

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