流域治水シュミレーション実施、効果を「見える化」 台風19号級でも被害減

流域治水の効果を見える化したシュミレーション

 栃木県と県減災対策協議会は9日までに、河川流域の自治体や住民らが連携して水害を防ぐ「流域治水」に取り組んだ場合のシミュレーションを初めて行い、結果を公表した。雨水をためる田んぼダムの整備などにより、2019年10月の台風19号クラスの降雨でも、浸水の区域や深さが大幅に減少した。県によると、効果の「見える化」は全国的にも珍しい取り組み。県のホームページで、宇都宮市の田川など4河川の結果を公開している。

 県は21年度、自治体や住民らが行う対策をまとめた「流域治水プロジェクト」を策定。堤防や調節池の整備といった従来の対策に加え、田んぼダムや雨水貯留タンクの設置、自宅の庭を砂利敷きにするなどの住民による対策も盛り込んだ。

 シミュレーションでは台風19号の24時間降雨量を基に、そうした対策によってどの程度の治水効果が得られるかを解析した。

 河川沿いに浸水が想定された田川では、0.5メートル未満の浸水区域が大きく減少。五行川(真岡市)は、真岡市役所周辺の浸水がなくなるとの結果が出た。

 栃木市内を流れる巴波(うずま)川と永野川は、広範囲にわたる浸水が軽減される見込み。1メートル以上の浸水区域が大幅に減ったのも特徴だった。巴波川は、河川沿いの地下に「捷水路(しょうすいろ)」と呼ばれるトンネルを整備することで水位を下げる。

 県は今後、解析結果を掲載した冊子を作製し、県民への周知につなげる。小学校高学年向けに「学習版」も用意し、来年度から防災減災教育に活用してもらう。

 県河川課は「一人一人の小さな積み重ねが被害の減少につながる。住民や市町、関係機関と連携して取り組みを加速、推進したい」としている。

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