食品14品目の出荷制限続く タケノコ10年ぶり解除も 栃木県内、放射性物質の影響 東日本大震災12年

原子力災害対策特別法に基づき出荷制限されている食品

 東京電力福島第1原発の事故発生から間もなく12年を迎える中、県内では食品14品目が依然として放射性物質の影響で国の出荷制限を受けている。昨年6月には矢板市内の一部区域のタケノコが10年ぶりに制限を解かれた。生産者は歓迎する反面、他の区域で制限が続く現状に「手放しでは喜べない」と明かした。

 国は一般食品で、放射性セシウムが1キロ当たり100ベクレルとする出荷制限基準を設けている。タケノコは2012年に5市町で出荷が制限された。22年6月、矢板市越畑の竹林3カ所で採れたタケノコが、県の検査で複数年にわたり安定的に基準値を下回ったとして解除された。

 生産者の同所、渡邊哲男(わたなべてつお)さん(75)は15年前、所有する竹林でタケノコを収穫し、農産物直売所で売り始めた。4~5月に100キロほど出荷して毎年完売していたという。今春は12年ぶりの出荷だが、事前に検査は求められる。「原発事故は終わっていない」と、影響の大きさを実感する。

 原木シイタケも県の生産管理工程に従い栽培され、検査で安全を確認されれば露地、施設栽培ともに制限が解かれてきた。22年度は露地が足利、鹿沼、茂木、市貝の4市町4軒、施設は矢板市1軒が解除された。露地は佐野市の1農家でも県の自粛要請が解かれた。

 野生のキノコ類や山菜類などは、一部市町で制限が続き、解除の見通しは立っていない。野生のシカやイノシシは、22年度も基準値を上回る個体が確認された。魚類は中禅寺湖のブラウントラウトで、県による持ち出し禁止要請が続いている。

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