日本アカデミー賞にアニメ映画「犬王」ノミネート、プロデューサーは福井出身 3月10日すずめの戸締まり、スラムダンクなど5作品から最優秀賞決定

アニメ映画「犬王」©2021“INU-OH”Film Partners
オンライン取材に応じる竹内文恵さん

 アニメ界のアカデミー賞と呼ばれる第50回アニー賞2部門にノミネートされ、65以上の国と地域で劇場公開や映画祭上映されるなど国内外で高い評価を受けるアニメ映画「犬王(いぬおう)」。舞台は室町時代だが、プロデューサーで福井県福井市出身の竹内文恵さん(47)は「どの国でも作品の楽しみ方の普遍的な部分は同じ。作品に込めた友情や、芸術を愛する人たちの思いといった普遍的なテーマを表現できたのではないか」と話す。

 古川日出男さんの小説が原作。実在したという能楽師の犬王と、琵琶法師の友魚(ともな)との友情を描く。彼らの舞、音楽、歌は都の民を熱狂させ、ついに将軍足利義満の前で芸を披露することになる-というストーリー。

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 竹内さんが初めてアニメに携わったのは、後に「映像研には手を出すな!」などを手掛け、世界で注目される湯浅政明監督の作品宣伝だった。その後、プロデューサーになった竹内さんは「もう一度、監督と仕事がしたいと原作を探していた。小説を読み『これだ!』とすぐ企画書を書いていた」と笑う。

 脚本は「逃げるは恥だが役に立つ」の野木亜紀子さん、キャラクター原案は「ピンポン」の漫画家松本大洋さん、音楽は連続テレビ小説「あまちゃん」の大友良英さんら、そうそうたるクリエイターが集まった。竹内さんは「(皆さんは)トップクリエイター同士の出会いを面白がってくれる。プロデューサーの大事な役割は、チャレンジしたいと思えるテーマの提示だ」と話す。

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 竹内さんは「成功しないといけないという風潮が(社会全体で)強まっている気がする。でも、成功しなくてもそばにいる人に認めてもらえることも大切。そこに目を向けることで社会が楽になるのではないか」との思いから、犬王のテーマを「舞う者と音を奏でる者の友情」「歴史に名を残さなくても芸術を愛する人たちの思い」にしたと明かす。

 米映画賞「第80回ゴールデン・グローブ賞」のアニメ映画賞部門にもノミネートされた。竹内さんは「海外のプロデューサーがどんな風に作品づくりをしているか学べた。クリエイターの才能をもう一つ広げてもらうための自分の課題も見つかった」と振り返りつつ「いつか福井ゆかりの作品に携われたら」と抱負を語った。

 同作は日本アカデミー賞の優秀アニメ作品賞にも選ばれており、3月10日の授賞式で「犬王」「かがみの孤城」「すずめの戸締まり」「ONE PIECE FILM RED」「THE FIRST SLAM DUNK」の5作品の中から最優秀賞が発表される。

たけうち・ふみえ 1975年生まれ。福井県立高志高校、神戸大学卒。TVアニメ「妄想代理人」(2004年)、劇場アニメ「マインド・ゲーム」(同年、湯浅政明監督)で初めてアニメの宣伝を担当。フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」(05年~)の立ち上げに参加。その後プロデューサー業を務めるようになる。実写映画プロデュース作品に「3月のライオン」(17年)「おらおらでひとりいぐも」(20年)など。

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