【東日本大震災12年】泥の中、探し続けた2カ月間 被災地救護の元自衛官、小田原で講演「命守る備えを」

東日本大震災で陸上自衛官として災害派遣の陣頭指揮を執った小田原市の中村管理監=同市中里

 陸上自衛官として東日本大震災の被災地で救護活動などの陣頭指揮に当たった神奈川県小田原市防災部の中村信也管理監が11日、同市内で講演した。手作業でがれきを取り除き、泥の中を探し続けるなど2カ月間の過酷な捜索活動も結局、1人の生存者も見つけられなかった。中村さんは12年前を振り返り、「震災は人ごとではない。命を守るための備えが重要」と改めて訴える。

 中村管理監は香川県の駐屯地に配属された連隊の隊長として宮城県女川町に派遣された。女川は最大14.8メートルの津波に襲われ、市街地はほぼ壊滅し827人が死亡、行方不明となった。津波は数キロ先まで押し寄せ、4階建ての建物の屋上に流された電車の車両が横倒しになった状況だった。「果たして終わるのか」。見たこともない惨状にぼうぜんとした。

 重機も入らないがれきを手で取り除き、横転した車を十数人がかりで引っ張った。全身の皮膚が剥がれ無残な姿になり果てた妊婦を海上で見つけた若い隊員は泣き崩れた。生存者の発見は絶望的だったが「1日でも早く家族の下に帰してあげたい」と朝晩も休む間もなく200人以上の遺体を見つけ出した。

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