【連載】World Baseball Classic あの瞬間をもう一度⑦

今年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック。第5回となる本大会には20ヵ国のスター選手が「ベースボールの世界王者」をかけた熱戦を繰り広げる。本シリーズでは2006年の初大会から撮り続けているカメラマン田口有史氏が捉えた、代表の母国を歓喜で打ち震わした歴史的な瞬間を紹介する。写真を振り返りながら、感動で泣け叫んだ瞬間、悔しさでうなりを上げた瞬間を思い出そう。

前回日本が世界一になったのは2009年の第2回大会。その時以来のワールド・ベースボール・クラシックへの参加となるのがダルビッシュ有投手。

2009年当時は日本ハムファイターズに所属して、国内最強投手の名の下に先発投手の柱としての日本代表選出だった。しかしながら、クローザーとして期待されていた藤川球児の不調もあって、決勝ではクローザーとして韓国との決勝戦を迎えた。

第1回、第2回と、何度も死闘を繰り広げてきた日韓戦。日本が3対2とリードして連覇の期待が膨らむ中、9回のマウンドに立ったのはダルビッシュ投手だった。

慣れないクローザーというポジション、なんとしても日本を下して死闘に決着をつけ、優勝をしたい韓国の粘りに、ダルビッシュ投手は1点のリードを失ってしまう。

しかし10回表にイチローの伝説の一打が飛び出して再び1点のリードでマウンドに登ると、このチャンスはキッチリと抑えてマウンド上で吠えると、世界一の歓喜の輪の中心となった。

あれから13年。メジャーリーガーとなって確固たる地位を築いたダルビッシュ投手は、日本代表のキャンプ初日から参加。若い投手陣のお手本、指導役としての役割も担うようになった。

前回世界一になった時、最後にマウンドに立っていたダルビッシュ。今回も世界一となるマウンドで吠える姿を撮れることを期待したい。

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田口 有史(たぐち ゆきひと)/日系アメリカ人の親戚がいたこともあり、幼少の頃よりMLBに興味を持ち、中学生の頃からよりのめり込む。アスリートになれなかったため写真を始め、MLBを撮りたくてアメリカ留学。そのままフリーランスとして活動をし、30年近くMLBを撮影。全30球団を毎年必ず撮影することを自身に課し、1年の半分近くをアメリカで過ごす。オフィシャル・フォトグラファーとして予備予選なども撮影しているので、おそらく世界で最もWorld Baseball Classicの試合を撮影している。(写真:田口有史)

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