マクラーレンF1の新しい風洞が2年遅れで完成。6月からの使用を目指す

 マクラーレンF1チームは、待望の新たな風洞が完成し、6月から使用を開始したいと述べている。

 マクラーレンの重要なインフラである風洞の建設は、チームの前代表アンドレアス・ザイドルとテクニカルディレクターのジェームズ・キーが優先的に進めていたことで、当初は2021年に完成予定だった。しかし世界的な新型コロナウイルスのパンデミックにより、風洞の建設は2年遅れ、マクラーレンは空力作業のほとんどを、ケルンにあるトヨタの施設で行っていた。

 2023年シーズンの開幕戦が行われたバーレーンで、ザイドルの後任としてマクラーレンの指揮を執るアンドレア・ステラは、チームの重要なインフラがいつ稼働し、どのように開発作業が進められるのかについて、次のように見解を示した。

「6月に、新車の段階となっているはずのクルマを風洞に設置したいと考えている。風洞はすでに稼働しているが、キャリブレーションのプロセスがある。圧力、速度場、力の測定などに使う方法論をインストールする。こうしたことをすべて行うのに数週間かかる」

「ハードウェアとしては存在しており、送風機は動いている。私のオフィスはいいものだ。その音が聞こえるからね。非常に心強く感じるのは、我々が進歩しているということだ」

「しかしまだ関連するテストのためにマシンモデルを入れることはできない。新しい風洞と別の風洞にリファレンスモデルを入れて、相関性と再現性を確認しなければならない」

「それに新車モデルを使う予定はない。旧仕様のマシンモデルで行いたいと考えている。新しい風洞の理解を深めてから、新車(2024年型)を使用したい」

2023年F1第1戦バーレーンGP FIA会見に出席したアンドレア・ステラ代表(マクラーレン)

 ケルンにあるトヨタの風洞を頼りにするということは、海峡を渡ってパーツをドイツに運ぶということだ。それは実際には一時的な解決策となっていたものの、動きの速いF1の世界において時間を短縮できるやり方ではないと、ステラは認めた。

「デザインが決まったら、そのモデルのためのパーツを作り、その後バンを運転してケルンに行く。それで数日をロスしてしまう。F1は非常に動きの速いビジネスだ。このようなやり方はできない」

「言い訳のように聞こえるので、風洞のことばかり話したくはないが、間違いなくこのことは開発の品質やスピードの点で弱点になっている。なぜなら風洞でパーツをテストするだけのために、このような時間のかかる手順を踏まなければならないからだ」

 マクラーレンは自社内に風洞を持たないことで、マシン開発において大きな不利益を被っていると、しばしば指摘されてきた。しかしステラは、風洞がなかったことは、ドラッグが大きい2023年型マシン『MCL60』の開発不足につながったいくつかの要因のうちのひとつにすぎないと述べている。

「マシンの現状の根拠を示すのに、風洞だけでは不十分だ。風洞とは別に、我々はもっと優れた仕事ができたはずだった。このことについては現在見直しを行っている」

「非常に正直に言えば、このことは事実として受け入れられているし、実際のところ将来の開発に向けて、グループ全体にいい教訓を授けてくれた」

「だからこそ、私が専念していることがわかるだろうし、開発の点でこのマシンは活かされていると考えている」

 マクラーレンはこれからの数戦で、小規模なアップデートを持ち込むとしている。MCL60の最初の大規模アップデートは、4月末にバクーで開催されるアゼルバイジャンGPで投入される。

2023年F1第1戦バーレーンGP オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

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