19歳の男に懲役6年の実刑 集団暴行で約24mの屋上から飛び降りさせる 男性(19)は失明、高次脳機能障害

去年、広島県府中町の商業施設で男性が集団で暴行され、立体駐車場から飛び降りを余儀なくさせられた事件で、広島地方裁判所は、ただ一人起訴された19歳の男(逮捕当時18歳)に懲役6年の実刑判決を言い渡しました。

裁判は、広島市東区の無職で19歳の男が、去年6月、府中町にある商業施設で当時19歳の会社員の男性を集団で暴行し、高さ24mの立体駐車場の屋上から飛び降りることを余儀なくさせ、地上に転落させるなど、あわせて7つの事件で傷害などの罪に問われたものです。

これまでの裁判で、検察側は男が事件を主導したとして、被害を受けた男性が左目を失明し、脳挫傷による高次脳機能障害などの後遺症が残っていることにふれ、「犯行は卑劣で極めて残忍、厳しい刑事責任を問う必要がある」として、懲役8年を求刑していました。

一方弁護側は、「保護処分による更生が妥当」などとして、少年院への送致を前提として、事件を家庭裁判所に移送することを求めていました。

判決で、広島地裁の藤丸貴久裁判官は、「ほとんど無抵抗の被害者に対して面白半分に一方的に苛烈な暴力をふるい、屋上からの飛び降りを決断させるまでに追い詰めた。被害者を肉体的精神的に痛めつけた『弱いものいじめ』といえる。被告人は被害者を突き落としたり、落下を積極的に差し向けたりしたことはなく、傷害は被告人らの予想を超えるものだったが、被害者が極度の恐怖心を抱き、必死に逃走を図る過程でそのような行動を選択したからであり、被告人らの行為に起因するところが大きい」と指摘。

「被告人が高校入学後に入社した勤務先で大人たちの理不尽な暴力にさらされ続け、被告人の未熟さと合わさって暴力に親和的な価値観を形成し、あるいは心理的な防衛反応として他人の痛みに対する共感性を失った可能性を排斥できず、外部的環境要因の影響があったこと自体は否定できない」としましたが、「被告人の行動に照らすと、勤務先での問題は、本件との関係では間接的な影響を与えたに過ぎない」と述べました。

そして、「被告人が特定少年であり、責任ある大人としての振る舞いが期待される年齢であることを踏まえると、保護処分の選択は社会的に許容し難い」と実刑判決とした理由を述べています。

この事件では、事件に関わったとして複数の少年らが逮捕され、家庭裁判所に送られましたが、男はその中で唯一、「犯行を主導した」として、検察官送致(逆送)されました。その後起訴され、20歳以上と変わらず、公開の刑事裁判で裁かれていました。

去年4月施行の改正少年法で18・19歳は「特定少年」と位置付けられ、実名報道も可能となりましたが、広島地検は実名を公表していません。

© 株式会社中国放送