「周りの地形、人工物…想像して備えを」台風15号から半年 ハザードマップの“外”でも浸水被害【わたしの防災】

2022年9月、静岡県内に甚大な被害をもたらした台風15号からまもなく半年。巴川の氾濫などで被害を受けた静岡市では実際の浸水エリアが分かってきました。現地調査ではハザードマップでカバーしきれない場所も見えてきました。

<和田啓記者>

「こちら(静岡市上下水道局)の部屋では今まさに台風15号で実際に浸水したエリアを地図に落とし込む作業を行っています」

静岡市ではこれまで罹災証明などで、どの家が水に浸かったのかまでは分かっていました。水害から半年、調査を続けたことで詳細な浸水エリアが明らかになってきました。

2022年9月の台風15号では1時間雨量で七夕豪雨を超える107ミリを観測し、巴川が氾濫。

静岡市内で4400棟以上が床上浸水被害に遭いました。浸水した家屋の位置を表した図では、巴川水系を中心に被害が集中しているのが分かります。それらの情報をもとに今回、市が作ったのが浸水実績図。地図に落とし込んだことで面的な広がりを一目で確認できます。この図を作ったことで、静岡市の職員に気付きがありました。

<静岡市の職員>

「線路沿いですかね。この辺はまだカバーできてないですね。ポツポツくらいですね」

「把握してないところでも被害が出てたことが分かりました」

Q.把握していないというのは、もともと想定していた所と違う という意味ですか?

「そうですね」

静岡市の洪水ハザードマップにさきほどの地図(浸水実績図)を重ねてみると…一部、カバーできていないところがありました。特に、巴川の支流沿いに点在しています。

<静岡大学防災総合センター 北村晃寿センター長>

「ここだね、ここですね」

ハザードマップでカバーできていなかった場所の1つ、静岡市清水区のJR草薙駅近くを流れる草薙川を専門家と訪ねました。静岡大学の北村晃寿教授は発災直後の現地調査で、この場所の写真を撮っていました。国道をくぐる橋の欄干に流木がたまっていました。

<静岡大学防災総合センター 北村晃寿センター長>

「まあやっぱり低いもんね。ここのところで見ると分かる。流木とかが引っかかるとここでダムみたいにできちゃうから、そうすると水が停滞してどんどん水かさが上がってこの周辺が床上まで浸かる」

近くに住む人は…

<近所の人>

Q.ここにどのくらい水が入りました?

「だいたい2センチくらいかな高さが。いや〜大変」

ものすごい勢いで流れる草薙川を目の当たりにしていました。

実は、ハザードマップに反映されているのは、大きな河川の浸水想定だけ。中小河川を網羅したハザードマップ作りの方針を国が示したのは2021年のことで、まだ完成していません。さらに、川から少し離れた草薙駅すぐ近くの住宅街も、床上浸水していたことが判明。

<静岡大学防災総合センター 北村晃寿センター長>

「地形的に両方から低くなってくるから水が集まりやすい」

浸水した理由は地形でした。他の場所より低くなっていて、線路の構造物が壁となり水をせき止めていました。北村教授はハザードマップの精度が上がるのを待つのではなく、今できる対策を進めることが重要だと話します。

<静岡大学防災総合センター 北村晃寿センター長>

「自分の周りの地形や人工物、要するに川の様子を見て想像力をもって周辺の状況を改めて確認するのがいいと思う」

ハザードマップの限界も見えてきた今回の災害。毎年のように起きる豪雨災害に備えて、自分の目でもリスクを見極める必要があります。

ハザードマップには、大きな河川以外の下水道や水路などから水があふれた時を想定したものもあります。

「内水ハザードマップ」と呼ばれるものです。これですべてを網羅するわけではありませんが、市街地の細かいところまで色分けされているので、自分の住んでいるエリアを確認すると水害のリスクに気付けるかもしれません。

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