空飛ぶクルマLIFTの1人乗りeVTOLが有人飛行に成功。スムーズな飛行を披露

丸紅は日本で、国の許可が必要な屋外スペースでの空飛ぶクルマの有人実証飛行を初めて成功させた。

今回使用されたHEXAは、丸紅が万博の事業者選定で発表した会場内と外を結ぶ2地点間を移動を目指す機体とは別タイプ。米国航空当局が定めるウルトラライト級として認可を受けるために小型軽量でシンプルなデザインにしており、全長は4.5m、高さは2.6m、機体総重量は約221kg、積載量は約113kgとなっている。

LIFT AIRCRAFTのCEOを務めるMatt Chasen氏

バッテリーは18あるローターにそれぞれ取り付ける仕様になっており、そのうち6個が止まっても飛行の安全性に影響はでないという。巡航速度は約40〜100kmで、現在のバッテリーでの飛行時間は10〜15分は可能としている。

バッテリーは脱着が簡単にでき、充電もしやすい

ウルトラライト級なので飛行免許は不要だが、安全性の確保もかねて本社がある米国テキサス州で操縦訓練プログラムにより専用ライセンスを発行している。VRシミュレーションを含む座学とテスト飛行をあわせて約60分と短い受講時間で取得でき、3回行われた実証飛行のうち、最初の有人飛行でパイロットを務めたGMOインターネットグループ代表の熊谷 正寿氏も米国で取得しており「ヘリや飛行機を5年かけて取得したことに比べると驚くほど簡単だった」と述べる。

ゲームのコントローラのような操縦桿はシンプルで使いやすく、タブレット型のディスプレイは取り外し可能

操縦方法はとてもシンプルで、操縦桿は付いているが上昇や着陸は自動で行われる。今回は実証飛行のため異なっていたが、通常は座席に搭載されるタブレット型のディスプレイに高度や飛行速度などが表示される。熊谷氏の飛行は、垂直上昇と着陸、上昇後の直進および横移動と旋回飛行、四角を描くボックス飛行が3回に分けて行われた。いずれの操縦もスムーズで、終了直後に報道陣から感想を聞かれ、「気分は最高!」と笑顔でコメントしていた。

最初の有人飛行パイロットはGMOインターネットグループ代表の熊谷 正寿氏が務めた

その後に行われた無人飛行では、HEXAが単体で安全に飛行できる自律飛行性能を持つことを証明。最後に行われたLIFTのテストパイロットによる有人飛行は、より軽快に移動できる飛行性能の高さと、ホバリング中や着陸で操縦桿から手を放しても大丈夫なことをアピールして見せていた。

https://youtu.be/QsGU2JGPLmM

https://youtu.be/J4rMaI4cJ5s

実証飛行は「2025年大阪・関西万博の会場である夢洲における実証実験の公募」で採択されたことを受けて実施されたが、最も大きな目的は「実際に空飛ぶクルマが実用化されていることを実感してもらう」ことにある。LIFTは年内に全米各地での有償飛行開始を予定しており、今回の有人飛行を成功させたことで、その目的に一歩近づいたと言える。

日本での運用に向けた今回の実証飛行では以下のポイントについてデータを収集している。

  • 安全安心の確認
  • ダウンウォッシュと呼ばれるローターによる下方向への風力の計測
  • 騒音の計測
  • 環境面への影響調査

丸紅はHEXAが1人乗りということもあり、移動よりは観光やレジャー用をターゲットにし、可能であれば国内での販売も視野に入れたいとしている。万博での運用はについてはまだ未定だが、今回の飛行を見る限りでは技術的な問題はクリアされ、法規制やルールづくりのステップに入ったことが実感できる。

空飛ぶクルマの実用化に向けて大阪は、今回のように万博会場の夢洲以外でも実証実験フィールドを提供するなど力を入れており、今後も同様のテストが行われた時にはレポートしたい。

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