90年前の運転免許証、パスポートのような黒い冊子に金色の文字 沖縄市の伊禮門さん「父の形見」

 【沖縄】沖縄市に住む伊禮門清光さん(80)は、父の故・清市さん(享年82)が1935年に大阪で取得した運転免許を今でも大切に保管している。パスポートのような黒い冊子には、金色の文字で「自動車運轉免許證(うんてんめんきょしょう)(小型免許)」と記されている。今では珍しい約90年前の免許証は、正月や旧盆に集まった家族や親戚たちを喜ばせている。

 清市さんは1894年に与那城村(現うるま市与那城)で生まれた。就職のため大阪に移ると、配達の仕事を始めた。運転免許は仕事のために取得し、三輪車を運転していたという。

 当時はまだ珍しかった運転免許。清市さんの小型免許は、小型二輪や小型三輪などが運転できたとみられる。免許証の中には兵役を証明する年度や官等級などを記す欄があり、時代を物語る。清市さんは生前、よく運転免許証を指さし「子や孫に見せなさい」と話していたという。

 清市さんは結婚を機に沖縄に戻って来たが、沖縄では車を運転することはなかった。伊禮門さんは「働き者の父だった。三輪車で何を運んでいたのだろうか」と想像を膨らませる。毎年親族が集まる時には、この免許証を広げる。「みんなびっくりするよ。思い出話にも花が咲く。これからも形見として大事にしたい」と目を細めた。

 (石井恵理菜)

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