<南風>サム、スタバで働いてるの!

 今回は「アイアム・サム」という障がいをテーマにした映画から、経営者の視点で人材育成を考えてみた。ストーリーは割愛するが、注目したのは知的障がいがある主人公のサムがスターバックスで働いていることだ。20年以上も前の2001年の作品である。

 組織の一員としての日本のメンバーシップ型雇用とは異なり、アメリカでは、仕事(業務)単位でのジョブ型雇用が多く、採用の段階で組織の求めるスキルを明確に示した職務記述書が提示され、コミュニケーションが苦手でも、当該雇用においてコミュニケーションを必要としない業務であれば、雇用は成立する。そうした雇用文化も、障がいがある方の働きやすさにつながっているのだろう。

 日本の文化を考えると、終身雇用制度や年功序列、社員一緒に等しく研修や忘年会などでも親睦を深め、組織への帰属意識や社員相互間の信頼関係を構築していく、メンバーシップ型雇用がなじんだのであろう。しかし、今そしてこれからの若者がそうした雇用形態になじむのだろうか?

 若者だけではない。女性の社会進出や、夫婦の性別に関係のない育児分担、ライフワークバランスなど多様な働き方が求められる。社会全体が変化を求められている中、雇用形態や育成方針は一様で良いのだろうか。どちらにもメリット・デメリットはあるが、今までのような「社員は家族」や「一致団結」という考え方にも変化が必要なのでは。

 しかしだ! 私も含め多くの経営者は身を粉にして働き、時には家族や何かを犠牲にしながら経営に奔走している。そのような中で社員からの「この会社で良かったです」という一言でどれだけ報われることか。それを「多様性」というたった一言の言葉だけで、個人主義に傾倒していくことに、一抹の寂しさを感じるのは私だけだろうか。

(神谷牧人、アソシア代表)

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