「人の人生や命を考えたことあるのか」“袴田事件”検察の特別抗告検討に怒りの声

東京高等裁判所が「袴田事件」で再審=裁判のやり直しを認める決定を出したことに対して、東京高等検察庁が特別抗告を検討していることが分かりました。袴田巌さんは87歳。検察が特別抗告すれば、さらに長期化するのは必至で、弁護団は検察の方針に反発しています。

3月17日もいつも通り、日課の散歩に出かけた袴田巌さん。しかし、袴田さんの裁判のやり直しをめぐっては慌ただしい動きが起きているようです。

1966年に静岡県の旧清水市(現静岡市清水区)で一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」をめぐっては、東京高裁が3月13日、袴田さんの再審を認める決定を出しました。決定では最大の証拠とされてきた「5点の衣類」が、捜査機関によってねつ造された可能性にも言及しています。

関係者によりますと、東京高検はこの決定を不服とする特別抗告を最高裁に行うことを検討しているということで、判例違反を指摘できないか最高検と慎重に協議するものとみられます。

<袴田事件弁護団 村崎修弁護士>

「検事長、本当に出てきてくださいよ。まともに特別抗告なんてできるわけないでしょう」

袴田さんの支援者らは17日、東京高検の前に集まり、特別抗告を断念するよう抗議活動を行いました。袴田さんは87歳。検察が特別抗告すれば、さらに長期化するのは必至で、弁護団は速やかに再審の手続きに移るよう求めました。

袴田事件の弁護団として、40年近く活動してきた小川秀世弁護士は、強い言葉で検察の姿勢を非難しました。

<袴田事件弁護団 小川秀世弁護士>

「(東京高検の特別抗告の動きが)これが本当の話であれば、一体、検察庁というところは、人の人生や命というところを考えたことがあるのかと怒りを感じる」

一方、袴田さんの姉・ひで子さん(90)は「(検察の結論が)出てもいないのに、コメントのしようがございません」と話しています。

裁判官として30件以上の無罪判決を確定させ、映画やドラマのモデルにもなったといわれる木谷明さんも検察の姿勢について言及していました。

<元東京高裁 裁判官 木谷明弁護士>

「(東京高裁で)審理した結果、やはり検察の主張は認められないとなったわけなので、これをさらに最高裁に持っていっても勝つ可能性がないし、そんなことをすれば、検察の権力の乱用であると非難されても仕方がないと思う」

袴田巖さん87歳。「死刑囚」として、浜松の街を歩く前例のない状態がいまも続いています。特別抗告の期限は3月20日です。

© 静岡放送株式会社