「廃材ではなく宝物」“コーヒー豆のかす”が“ハンドクリーム”に 実現したのは「発酵のDNA」【SDGs】

豆からコーヒーを淹れた後、ほとんどゴミになってしまうコーヒーかす。これを捨てずに活用できないかと考えた静岡県沼津市の企業が、コーヒーかすをハンドクリームに生まれ変わらせました。

豆から淹れたコーヒーは香り高く、味わいも豊か。ただ、抽出した後には必ずコーヒー豆のかすが出ます。

<金原一隆記者>

「コーヒーを飲むと出るコーヒーかす。これを捨てることなく、コーヒーの良さをすべて生かしたい。そこで、誕生したのがハンドクリームでした」

<ソーイ 石垣哲治社長>

Q.コーヒーかすが入っている?

「かすと言いたくないので、コーヒーベースと呼びますが、これがまるまる入っています」

コーヒー豆を淹れた後の豆のかすを使うことで、ごみをゼロにしています。沼津市にある食品開発会社「ソーイ」がこのクリームを手がけました。

<金原一隆記者>

「ハンドクリームにはコーヒー豆のかすが入っているそうですが…(コーヒーの)ほのかな香りがする。ザラザラする感じはないです」

<ソーイ 石垣哲治社長>

「コーヒーベースはざらついているけど、米麹で発酵させることで、さらに滑らかにしている」

このなめらかさに欠かせないのが米麹です。米麹を使うことでコーヒー豆のかすが発酵して乳酸に生まれ変わります。

<ソーイ 石垣哲治社長>

「これがコーヒーベースを発酵させたものです。試してください」

<金原一隆記者>

「コーヒーで感じたことがない酸っぱさ」

<ソーイ 石垣哲治社長>

「その酸味が乳酸なんですね。廃材と言われていた、私にとっては宝物ですけれど、コーヒーかすを使うことで、植物系ですべてを循環できる、地球に優しく、体にも優しいものができてくるのが、発酵技術の肝」

ハンドクリームの保湿力を高めるための乳化剤には、これまで石油由来の原料が多く使われていました。石垣さんのコーヒー豆のかすから作った原料は植物由来で体に優しく、安全だということです。

<ソーイ 石垣哲治社長>

「『醸造家の血』がわたしの中に流れていて、その中に『もったいない精神』がありまして、すべてのものを生かして作りたい」

石垣さんが発酵にこだわるのは、代々、受け継いできた「発酵のDNA」があるからだといいます。石垣さんの家は280年ほど前から麹や酒、醤油づくりなどを営んできました。父親の禮三郎さんはパンの材料となる様々な菌や大豆の発酵技術を開発した研究者でした。

いま都内のアパレルショップにはこのコーヒー豆由来のハンドクリームが並び、注目されています。

<エベレストジャパン 橋本達史社長>

「どうしてもコーヒーを作る過程で、コーヒーかすが出てしまう。大半がごみになって捨ててしまっていると聞いて、再利用する方法がないのかなというのがきっかけでした。今後、固形の石鹸だったり、頭髪につける整髪料のバームなど、いろいろなものに使っていけるのではないかと考えています」

首都圏や関西に展開する人気コーヒーショップもこの取り組みに共感して、コーヒー豆のかすを提供しています。

<ソーイ 石垣哲治社長>

「資源は有限であることがだんだん分かり始めている。だったら有限な資源を有効活用するためには、廃材と思っていたものも、廃材ではなく宝物であると考えて、有効活用するために、私は発酵という技術を世の中に提供していきたい」

このクリームはこの週末まで東京・日比谷で先行発売されています。国内では年間およそ42万トンのコーヒーが消費されていて「コーヒーかす」は60万トンを超えるようです。大半が燃やすか土に還して処分しているということでコーヒー豆のかすはもっと有効活用できそうです。

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