勝田貴元、デイリタイアを乗り越えて完走。初出場のメキシコで多くの経験積む/WRC第3戦

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの一期生として、コドライバーコ・ドライバー のアーロン・ジョンストンとともにWRC世界ラリー選手権に参戦中の勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)が、3月16~19日にかけて開催されたWRC第3戦『ラリー・メキシコ』に初出場し、アクシデントに見舞われながらも完走を果たし貴重な経験を積んだ。

 2020年大会以来、3年ぶりにWRCのカレンダーに復帰したラリー・メキシコは、2023年シーズン最初のグラベル(未舗装路)イベントであり、2022年から登場したラリー1マシンにとっても初めてのラリーとなった。

 このラリーはメキシコ中央高原のレオンを中心にステージが行われ、標高2700mを越えるエリアや気温30℃度前後のなかで争われるなど“高地高温”のラリーとして知られている。空気が薄くなる高地ではエンジンの出力が20%程度低下し、路面が非常に荒れている場所も存在することから、マシンとタイヤを労りいたわりながら走らなければならない過酷なイベントだ。

 勝田はTGR WRTのドライバーの中で唯一ラリー・メキシコの出場経験がなく、今戦を多くのことを学ぶ機会として捉えていた。

 ラリーは16日(木)の夜にグアナファトの街で2本のオープニングステージが行われた後、翌朝からグラベルステージでの本格的な戦いがスタートした。序盤からタフなステージが続き、早々にトラブルに見舞われるマシンもあるなかで徐々にペースを上げていった勝田。朝一番のSS3で7番手タイム、SS4では6番手タイムを記録していたが、午前中の最後、SS5のグリップが低いセクションでスピンを喫しコースオフ。これによって走行を続けることができなくなり、デイリタイアを余儀なくされた。

 勝田のマシンは小さな崖から落下したものののダメージは比較的小さく、その晩にチームによる修復を受け、翌日のデイ3には再出走を果たすことができた。出走順が早い方が不利となるグラベルラリーで3番手からのスタートとなった勝田だが、ペースアップが難しい、グリップが低い路面でも自身にとって初めてのステージをひとつずつ確実に走り、多くの経験を積みながら完走を果たした。

「この道について学ぶ必要がある」とラリー・メキシコについて語るったのは、TGR WRTを率いるヤリ‐マティ・ラトバラ代表氏。

「メキシコは初出場でトップの選手たちのペースに近づくことが難しいラリーのひとつなんだ。グラベル路面はとても滑りやすく、路面のコンディションも頻繁に変化する特殊なイベントだからね」

「このラリーで成功するためには、この道について学ぶ必要があるんだ。(勝田)貴元は金曜日にそのことを痛感したと思うが、何よりも重要なのはチームがクルマを修理したことにより再出走して学ぶことができ、将来のために経験を積めたことだよ」

ラリー・メキシコに初出場したWRCチャレンジプログラム1期生の勝田貴元(2023年WRC第3戦ラリー・メキシコ)
2021年シーズンの途中から勝田貴元のコドライバーコ・ドライバーを務めているアーロン・ジョンストン(2023年WRC第3戦ラリー・メキシコ)

## ■勝田「初めて走るステージで、何が起こるかわからない難しいラリー」

 勝田は自身初の挑戦となったラリー・メキシコを次のように振り返った。

「自分にとってはすべてが初めて走るステージで、何が起こるかわからない難しいラリーでした。金曜日は少しペースが速過ぎたかもしれず、ひとつのミスで大きな代償を払うことになりました。もう少しクレバーであるべきだったと思います。非常にハイスピードなセクションでブレーキングポイントの判断がやや楽観的になり、コーナーにターンインするのが少し遅れてラインから外れてしまいました」

「クルマを直してくれたチームには感謝しています。自信と良いフィーリングを取り戻すのは簡単ではありませんでしたが、再出走後は最後までラリーを走りきり、多くの異なるステージで経験を積むことができたので良かったです。レッキを終えた時点で自分が予想していた以上にグリップレベルの変化が大きく、グリップを100%信頼して走るのは簡単ではありませんでした」

「クルマはとても素晴らしかったのですが、その性能をフルに発揮することができませんでした。次回はクルマからもっとパフォーマンスを引き出し、良い結果を出せるように頑張りたいと思います」

 勝田の次戦は、4月20から~23日にかけて、クロアチアで行われるWRC第4戦『クロアチア・ラリー』だ。2023年でWRC開催3年目を迎えるこのターマック(舗装路)ラリーは、高速区間とテクニカルな区間の両方を併せ持ち、舗装の状態の変化がグリップレベルを刻々と変化させることから、攻略が非常に難しいターマックラリーとして知られている。

勝田貴元(GRヤリス・ラリー1)は2日目のデイリタイアの後、チームスタッフによるマシンの修復を受けてデイ3から再出走、完走を果たした。2023年WRC第3戦ラリー・メキシコ
勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)2023年WRC第3戦ラリー・メキシコ

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