“みんなの公園、どう活用” 長崎市内800カ所 荒れ放題の場所も 住民主体で再整備検討

(写真左から)市による清掃後の城山公園、雑草で覆われた城山公園のベンチ=長崎市城山町(両方とも黒田さん提供)

 誰もが自由に利用できる「公園」。自然を楽しみ、世代間交流ができる憩いの場だが、雑草が伸び放題だったり、管理が行き届いていなかったりして、全然憩えないケースも。長崎市では、住民と行政が連携して公園のあり方を探る動きも出ている。
 長崎市城栄町の美容室「ロベリア」代表の黒田貴子さん(73)は昨年10月、近くの城山公園を訪れ、目を丸くした。地域の避難場所にも指定されているはずなのに雑草が生い茂り、遊具にたどり着けない。蚊が飛び交い、フェンスも草で覆われていた。
 「こんなの公園じゃない」。黒田さんが市の担当課に連絡した当日、職員が現地の状況を確認し、作業を手配。数日後には遊具やトイレが利用できるようになり、ようやく公園らしい姿を取り戻した。
 市によると、市内にある公園は約800カ所。自治会や指定管理者に管理を委託し、連携を図りながら、市としても年数回のパトロールなどで事故防止に取り組んでいる。「雑草が多い」「遊具が危ない」。住民からのこうした通報は貴重な情報源だが、公園にまつわる連絡は毎日のようにあり、職員は日々対応に追われているのが実情だ。

公園の活用策について意見を交わす住民ら=長崎市横尾2丁目、横尾地区ふれあいセンター

 黒田さんの通報をきっかけに、公園がきれいになると、近所の保育園や住民から「やっと利用できるようになった」と喜ばれた。ただ、住民みんなの「財産」であるはずの公園が、ここまで荒れ放題だったことに黒田さんは違和感を覚えた。「コロナ禍で公園の大切さは増しているのに、みんなひとごとで無責任でもあると思う。一人一人が公園の大事さに気付いてほしい」
      □ 
 住民が主体となって、使いやすい公園づくりに取り組む地域もある。横尾地区の横尾小校区コミュニティ連絡協議会などは、市と共同で地区内9カ所の公園の再整備を検討中。老朽化や住民の高齢化により、公園に対するニーズが変化してきたことが契機となった。
 昨年6月から、市と自治会、学校関係者、住民約40人が参加し、ワークショップ(全5回)を開催。長崎大工学部の学生らと県建築士会が運営する市景観整備機構がまとめ役を務め、管内の各公園の問題点や必要な整備、公園の役割などを話し合ってきた。
 今月5日に開かれた最終回のワークショップでは、これまでの議論や、地域の子ども、保護者の意見も取り入れて作成した整備計画案を協議。「石畳は転びやすい」「川に降りられる整備が良い」などと意見を出し合い、公園を生かすために地域が取り組むべき課題も洗い出した。
 ワークショップを通じ、公園に対する住民の意識も高まってきた。同協議会子ども育成部長の都知木睦(とちきむつし)さん(65)は「ハードの整備の後は地域がどう公園を使うかが大事。ハードとソフトが合致する公園にするため、早速考えなければ」と意気込んだ。
 市中央総合事務所の森尾宣紀理事は「地元ならではの要望が出て、他の地域で取り組むお手本になった」と話し、今後、地域の状況に合わせて取り組みを広げる考えを示した。


© 株式会社長崎新聞社