議員提案の条例化5件にとどまる 政策立案には消極姿勢 栃木県22市町がゼロ

県内議会で2019~21年度に議員提案で可決された政策条例

 下野新聞社が県議会と25市町議会を対象に実施したアンケートで、2019~21年度までの3年間に議員提案で政策的な条例を可決したケースは5件にとどまり、22市町議会が「無提案」だったことが23日までに分かった。政策条例の制定は議会の政策立案能力や意欲を測る指標の一つとされるが、ほとんどの議会が消極的な状況にある。

 アンケートでは議員定数や報酬など議会内ルールに関するものを除いた、住民の暮らしなどに関連する政策条例議案について、議員提案の提出、可決件数を尋ねた。

 3年間で議員から提出された議案の多くは議会内の規定か、国などへの「意見書」だった。

 議員提案で政策条例を成立させたのは県議会と那須塩原、下野、那須の3市町議会のみ。県議会は「プラスチック資源循環推進条例」と「県犯罪被害者等支援条例」の2件を可決した。

 一方で、超党派議員でつくる検討会が21年9月に公表した「性の多様性に関する理解の増進に関する条例(仮称)」については一部で慎重論が根強く、いまだ提出に至っていない。

 那須町議会は議員提案で、家族や身近な人を介護するケアラーの支援を目的とした条例を提出し可決。県議会も22年度にケアラー支援条例を成立させた。

 那須塩原市議会は「食育推進条例」、下野市議会は「かんぴょう条例」をそれぞれ提出し可決している。

 政策条例の提案が低調な理由について、ある県央の市議は「ここ数年はコロナ禍で他自治体の視察ができなかったことも影響した。一般質問などを通して政策の提言はしているが、条例づくりとなると専門性や議会内の意思疎通も必要になりハードルが高い」と話す。

 元相模女子大教授で地方自治研究者の松下啓一(まつしたけいいち)氏は「首長と議員は政策を出し合い切磋琢磨(せっさたくま)するべきだが、(本県の議員提案による政策条例は)少な過ぎる」と指摘。「議会には市民の声を反映した施策を提案し、行政を後押しすることが求められる。特に県議会をはじめ規模の大きな自治体が先駆的に条例を制定することで、他自治体の道を開くことが必要だ」としている。

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