年度替わり

 この花が時を超えて愛されている証拠がまた一つ。ああ、きょうも雨か、これじゃ桜の花はどうなっちゃうの…と、令和の私たちと同じ心配をしている人を万葉集の時代に見つけた。〈春雨のしくしく降るに高円(たかまど)の山の桜はいかにかあるらむ〉河辺東人▲21日の開花宣言からこっち、あちこちの桜が順調に咲き進む一方で、あいにくの不安定な空模様が続いている▲ともあれ3月の暦は遠慮なく進んで、いよいよ年度替わりの慌ただしい時期だ。昨日は、登校にしてはゆっくりめ、下校には早過ぎる…という時間帯に近所の国道沿いで中学校の制服姿を幾人も見かけた。学校は修了式のはずだけど…▲と、しばらく考えて、ああ、この子たちはおそらく卒業したばかりの3年生で、これから先生の離任式に向かうのだ、という推測にたどり着いた。退職や転勤の先生にお別れやお礼が言える春は久しぶりかもしれない▲長崎大は卒業式があった。新生活のスタートはすぐそこ、いろいろかみ締めたり振り返ったりするのは後回しで、この週末から向こう1週間のうちにダッシュで引っ越し…きっとそんな皆さんも▲隣の週間天気に「晴れ」のマークが戻るのは月曜日。花は散っちゃうし、転居にも不便、天気予報が外れてくれないかな、と空を見上げる人の数を思う。(智)

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