B2・長崎ヴェルカ 故障離脱のディクソンJrタリキ「強くなって戻ってくる」

スタッフとリハビリに励むタリキ(左)=佐世保市、長崎ヴェルカクラブハウス内体育館

 チームに欠かせないスピードスターが、今、懸命にもがいている。バスケットボール男子Bリーグ2部(B2)で西地区2位につけている長崎ヴェルカのポイントガード、ディクソンJrタリキ、24歳。左膝の故障と闘いながら、再びコートで躍動するための準備を続けている。
 昨年10月26日、今季初の平日開催ホーム戦。相手選手と接触して左膝を痛めた。その後、腫れが引かずに病院で検査したところ、骨の2カ所が損傷していることが判明。痛みをごまかしながらプレーを続けようとも考えたが、完全復活するために約2カ月後の年末、自身初めての手術を受けた。
 これが「けがの功名」だった。新たに半月板の損傷が見つかった。治療専念に踏み切ったことが、結果的に吉と出た。
 手術後は地道にリハビリを継続。2月に松葉づえが外れると、月末には軽いジョギングをできるようになった。クラブハウス内の体育館で久しぶりに走った日。歩くような速さだったが「めっちゃうれしかった」。
 年明けからは前田健滋朗監督らに見てもらおうと、ヴェルカの試合リポート作成に取り組み始めた。ワンプレーを分析して文字にする。例えば、シューターのヘディングが厳しいマークをかいくぐってレイアップに持ち込んだプレーが、どうして成功したのか。そのプレーを自分ならガードとしてどう生かすか-。「すごく大変な仕事。試合の翌日には次節の対策ができているスタッフ陣のすごさがよく分かった」
 主将の髙比良寛治は、そんなタリキの姿勢を評価する。「結構夜遅くまでやってるっぽい。アウェー戦で帯同してない時に“あのステップ、いつ練習したんですか”と連絡が来たり。細かく見てくれている」。後輩の成長を喜んでいる。
 今季のリーグ戦は残り10試合。5月から始まるプレーオフも含めて、戦列復帰は難しそう。故障者や体調不良者の続出に苦しみながらも、一人一人が徐々にコンディションを上げてきたシーズン最終盤、取り残されたような焦りもある。
 それでも、日々の成長を大切にするチームの中で、自分も少しずつ進化しているという実感はある。もう一度、コートを全力で走り回れるその日まで。「もっと強くなって戻ってくる」。司令塔候補は地に足をつけて前に進んでいる。

 【略歴】ディクソンJrタリキ 愛知県出身。小学4年から競技を始め、中部大第一高2年時に全国高校選手権(ウインターカップ)で4強入りに貢献した。主力を務めた日体大を卒業後、トライアウトから長崎ヴェルカ創設メンバーの一人として加入。高い身体能力を生かした守備とドライブが武器で、狩俣、山本に次ぐ司令塔役として期待される。グリーンピース以外の食べ物は何でも好き。182センチ、85キロ。


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