WBC閉幕

 ゲームに時間の制限がなく、得点にも上限がないから“安全圏”が実は不確定で、投手の出来が試合を左右する比重が大きく、一方で攻撃は7~8割が失敗するように設計されていて、つまり、野球は本来、思惑通り・予想通りにならないことが頻繁に起きる球技だ▲そのことを忘れそうになっていた。野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。「世界一奪回」を合言葉にトップ選手が集った日本代表・侍ジャパンが7戦負けなしの“有言実行”で頂点に立った▲チームの中心にはいつも二刀流の大谷翔平選手がいた。「カッコいい」-ここ何日かの間に、この極めてシンプルな賛辞を何度口にしたか分からない▲1点負けていた準決勝の最終回、打球は長打コース、ヘルメットを手で跳ね上げながら激走し、塁上で大きく吠えた。決勝の最終回、マウンドに向かうユニホームはそれまでの全力の走塁で汚れていた▲最後の最後、打席には米国の主砲で、メジャーでの僚友トラウト選手。フルカウントから投げ込んだ高速スライダーの美しい軌道がなかなか頭から離れない▲まるで作ったような名場面だった。漫画や小説ならデキすぎ…野球の神様謹製の「おとぎ話」なのかもしれない。だったらエンディングはあの8文字だ。「めでたし、めでたし」(智)

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