がんになったらすべてを保障してくれるわけではない?知っておきたいがん保険の保障範囲

がん保険の契約件数は、2527万件(生命保険協会調べ2020年度)で、かなり多くの方が契約をしています。そもそも「がん保険」とは、どんな保険でしょうか?

「がん保険」とは、「医療保険」の一種ですが、がんという病気しか保障しない保険です。逆にいうと「がん」になったときには保障してくれますが、がん以外の保障はありません。では、「がん」になったら、すべてを保障してくれるのでしょうか?

じつは、そうでもありません。

どんな「がん」に対して保障してくれるのか? または、どんな場合には「保障」してくれないのか? 再度確認してみましょう。


上皮内新生物の対応は保険会社によって異なる

一般的に「がん」といわれるものは、「悪性新生物」のことです。がんの病変が基底膜を超えて浸潤しているものをいいます。血管やリンパ管を通して転移する可能性のあるものです。これがステージ1以上になります。がんという病気は、進行状態でステージが分かれています。基本的には、ステージ0からステージⅣの5段階に分かれています。

ステージ0というのは、上皮内がん(以下、上皮内新生物)といわれて、がんが上皮内にとどまっていて、リンパ節まで達していない状態を指します。手術などで、腫瘍を取り除ける段階です。「上皮内新生物」と診断された場合、がん保険の保障が使えるのかは、保険会社によって対応が異なります。

通常のがん(以下、悪性新生物)と同じように保障がある保険、または、半額や10万円などに減額した保障がある保険、上皮内新生物には保障がなく、特約を付けることで保障がつく保険などです。最近は、通常の保険と同じ保障という商品が増えてきました。ご自分のがん保険がどれなのか、契約を確認してください。

上皮内新生物の定義は、保険会社によって違う?

さて、この「上皮内新生物」という定義ですが、これも保険会社によって違うのです。

「上皮内新生物」といっても、「中等度異形成」「高度異形性」「上皮内がん」の3つの状態に分かれます。WHO(世界保健機関)では、「中等度異形成」「高度異形性」「上皮内がん」を「上皮内新生物」としています。しかし、日本ではがん保険で保障される「上皮内新生物」というのは、「高度異形性」「上皮内がん」を採用している保険会社が多いのです。

WHOが定める「中等度異形成」「高度異形性」「上皮内がん」の状態を「上皮内新生物」として保障されているがん保険は、アフラックと一部の大手日本社などだけです。

もし、診断書に「中等度異形成」と書かれている場合には、WHOの定めによるところの「上皮内新生物」にあたります。ご自分の加入している保険会社に確認を取ってみてください。もしかするとがん保険の適用になるかも知れません。

残念ながら、がん治療に伴う合併症などは保障されないことも

では次にがんになって、がん治療に伴う合併症になったときに、がん保険の保障があるでしょうか?がんの合併症は支払い対象であるが、がんの治療に伴う合併症については保険会社によって取り扱いが異なります。

たとえば、胆管がんの摘出手術で治療したり入院したりすると、これはがん保険の対象となり、入院給付金、手術給付金、通院給付金などを受け取れます。では、がん治療のために手術したところ、その手術などが原因で入院するとなった場合ではどうかというと、例を出して説明してみましょう。

「胆管がんの手術後に縫合不完全の治療で入院・通院した場合はどうなるのでしょうか?」

この場合もがんの手術は、がん保険の対象になります。ところが、がんの手術が直接の原因であっても、縫合不完全での治療のため、入院をしたり通院したりした場合には、がんの治療ではありませんので、この場合はがん保険の対象外になります。しかし、先程と同じようにアフラックなど一部の大手日本の保険会社は、がん保険の対象になります。

パンフレットには掲載していない細かな保障範囲とは

最初に説明をしたとおり、がん保険とはがん治療のみに特化している保障内容というのがおわかりになったと思います。

ところが、このような細かな保障範囲は、商品パンフレットには、ほとんど入っていません。約款には細かく書いてあるのですが、分厚い約款を隅々まで読む人はあまりいないと思います。

しかし、がん保険で保障してくれる範囲はどこまでなのかは、保険を選ぶときにとても重要な項目です。ご参考にしてください。

参考情報
SBI損保「がんのステージとは
国立がん研究センターがん情報サービス

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