「加入者の健康づくりに注力」 協会けんぽ長崎支部長・野口已喜夫氏 生活習慣病予防健診、4月から負担減

「健診は健康づくりの第一歩」と話す野口支部長=長崎市大黒町、協会けんぽ長崎支部

 中小企業の従業員や家族が入る全国健康保険協会(協会けんぽ)は4月から、加入者が生活習慣病予防健診を受けた際に支払う費用の自己負担を軽減する。負担率を現行の38%から28%に引き下げ、負担の上限額は7169円から5282円に減る。協会けんぽ長崎支部の野口已喜夫支部長(69)に背景や狙いを聞いた。

 -長崎支部の現状は。
 昨年10月時点で県内の2万3700事業所、43万5千人が加入している。2021年度の1人当たりの医療費は20万7095円で、全国で6番目に高い。23年度の県単位保険料率は10.21%になった。22年度より0.26ポイント下がったものの、それでも都道府県別では10番目に高い。

 -なぜ生活習慣病予防健診の自己負担を減らすのか。
 医療費が上がり続ければ協会けんぽの財政が悪化し、保険料率が上がる。加入者の健康づくりに力を入れることで、医療費の適正化にもつながる。健康づくりの第一歩は毎年健診を受けることだ。高血圧症や糖尿病、高脂血症など生活習慣病を早期に治療し、重症化を防ぐことが重要になる。21年度の40歳以上の健診実施率は全国平均で54.8%だ。長崎支部は60.8%だが、もっと引き上げたい。

 -生活習慣病予防健診は協会けんぽが実施主体。事業所が実施する定期健診との違いは。
 生活習慣病予防健診は35歳以上が対象で、協会けんぽの費用補助がある。メタボリック症候群と同時に5大がん(肺、胃、大腸、子宮、乳房)までカバーした健診項目になっており、定期健診の項目も含んでいて内容が充実している。
 一方、定期健診は協会けんぽの補助がなく、健診項目も少ない。35歳以上になっても定期健診を受けている人が多いようだが、4月から生活習慣病予防健診の自己負担が減るので、切り替えた方が費用も安く済む可能性が高い。従業員の健診費用を補助している企業は定期健診から生活習慣病予防健診に切り替えた方が大きなメリットになる。
 生活習慣病予防健診のデータは医療機関から協会けんぽに提供される。健康づくり事業に役立てることができ、健診実施率がより正確に把握できる。

 -健診を受けた後の早期受診や生活改善が大切になる。
 健診を受けた後の行動こそが大切だ。医療機関への受診が必要な人に文書や電話で受診勧奨しているが、受診しない人も多い。生活習慣の改善が必要な人に、協会けんぽの保健師や管理栄養士が寄り添ってサポートする特定保健指導を行っている。健診当日に、医療機関で特定保健指導を実施する取り組みも進めている。生活習慣病予防健診を受けられる78医療機関のうち、特定保健指導ができるのは27機関だが、さらに増やしたい。
 従業員の健康づくりに積極的に取り組む「健康経営」を事業所に宣言してもらう事業に、県と共同で取り組んでいる。今年1月末時点の宣言事業所は924で、もっと拡大したい。医療機関への受診が必要な人に社長自ら声をかけ、受診を勧めている企業もある。人手不足に悩む企業も多いが、従業員一人一人の健康を大切にする働きやすい企業が選ばれるのではないか。

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