いま注目の!“わざわざグルメ” 仕上げはお客様…が「特別感」「楽しい」 コロナ禍明け外食に“新ジャンル”

いまグルメ業界で注目されているのが「わざわざグルメ」という新たなワードです。大手グルメサイト「ぐるなび」が2023年春のトレンドと位置付ける新たなジャンルは、私たちが失った楽しい体験を呼び起こしてくれるグルメです。

静岡県富士市にある土鍋で炊くご飯が自慢の「米えにし」。人気メニューの「炙り牛かつ定食」は岩塩や特製だししょうゆ、赤ゆずこしょうなどの調味料で楽しめます。そして、ほかにはないある仕掛けがあります。

<米えにし 秋山元哉店長>

「お肉はレアで揚がっているのでお好みの焼き加減で鉄板の上で焼いてお召し上がりください」

店では牛肉の火の入り具合を客が調整できるのです。最後の仕上げを客自身が手がけられる料理は「わざわざグルメ」と呼ばれ、いま注目が集まっています。

<井手春希キャスター>

「ジューっていってる。おいしそうな音。待っている時間も幸せですね。好きな焼き加減で食べられるのは特別感がります」

店では、ほかにも季節限定で、にいがた和牛を使った「すき鍋定食」を提供しています。こうした「わざわざグルメ」は、来店客の約4人に1人が注文するといいます。

<客>

「家ですき焼きをやると忙しい、お母さんは食べられない。でも、これは自分へのご褒美みたいな感じで食べられてうれしい」

「きょう結婚したんですよ。いつもは来ない…ちょっとぜいたくをしに来た」

<米えにし 秋山元哉店長>

「わざわざ来てくれるお客さんに丁寧に料理を出して一緒に楽しんでいけるようなお店にできればと思う」

新型コロナによる緊急事態宣言などで自粛ムードが広がり、外食の機会は失われました。ようやくコロナ禍が開けようとしているいまは、飲食業界にとっても客を取り戻す大きなチャンスなんです。

<株式会社ぐるなびリサーチグループ長 本間久美子さん>

「コロナ禍では、短時間にさっと食事を済ませるような行動も続いていた。そうした便利さやスピードに慣れたお客さんに逆にわざわざグルメを体験してもらおうと」

「わざわざグルメ」の人気はほかにも…。静岡市駿河区用宗にあるCafe海風文庫で人気の「わざわざグルメ」は「炙りだんご」。みたらし、こしあん、つぶあん、季節のあんの中から2種類選べます。何と、来店客の7割が注文するそうです。

<客>

「焼いてること自体が楽しい。そこから会話が生まれるし」

その楽しさで客を寄せ付ける「わざわざグルメ」ですが、店側にはそれなりの負担も…。

<Cafe海風文庫 瀧 加津江さん>

「備長炭の値段が上がってきたのでそれが半端じゃない。実際、団子よりも炭の方が原価は高い」

わざわざグルメでは燃料費が余計にかかるほか、客別に出す七輪など初期投資も必要。その上、安全管理が求められ、手間とお金がかかるのは事実です。それでも、ほかの店と差別化を図れることは店側にとって大きなメリットです。

<Cafe海風文庫 瀧 加津江さん>

「とにかくお客さんが楽しそうに食べてくれるのが一番の醍醐味」

コロナが落ち着きを見せ、周りを気にせずに外食が楽しめるようになったいま、「わざわざグルメ」は私たちに新たな選択肢を示してくれています。

大手グルメサイト「ぐるなび」の調査では、20~60代の約5割、20代の実に6割が「わざわざグルメ」を食べてみたいと回答していて、その人気の高さが分かります。

© 静岡放送株式会社