<金口木舌>職人たちの出発

 花見でレジャーシートを広げる風景を表現したり、とんぼの柄の中に「赤ちゃんとんぼ」が隠れていたり。きょうまで沖縄市役所で開かれている知花花織事業協同組合で学ぶ研修生3人の修了展に、個性あふれる作品が並んでいる

▼戦争でほとんど制作が途絶えた知花花織の復元に向け、市が作業所を設置したのは2000年のこと。消滅の危機を乗り越え、11年前には国指定伝統工芸品になった

▼展示会は新たな織り手が出発する「節目」だ。国指定時の組合員数は38人。今回研修を終えた3人を迎え、4月には68人にまで増える

▼若者はパソコンを駆使してサクサクと意匠を作る。柄を織るのに、何本の糸をどこに通すのかも自動で計算する。新たな血が刺激をもたらしていると話すのは、組合で指導担当のベテラン大城留美子さん

▼とはいえ、その工程が正しいかを判断するのは、蓄積された先輩職人の知識や研修でたたき込む基礎的な技能。修了展は、琉球藍で染め、紅白の浮き模様を通したおなじみの織物も全員が披露しているのが奥深い。

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