強制送還を避けるため ビザ取得の面接を練習 「トリとロキタ」本編映像

カンヌ映画祭のパルムドールを2度受賞しているジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の最新作「トリとロキタ」(公開中)から、ロキタがビザを取得するために面接の練習をするシーンの本編映像が公開された。

「養護施設で弟を見分けた方法は?」という質問にロキタは、「2011年生まれで、不吉な力のある子を捜した」答えるが、「いや、もっと限定したほうがいい。生まれた月まで言おう」と、より具体的に答えられるようストイックに練習を繰り返す。移民の子供たちは18歳になってもビザがないと正規の職に就けず、強制送還させられてしまう。すでに17歳のロキタはには、“家事ヘルパーになってトリと一緒に暮らす”という夢があり、その夢をかなえるためにも必死に面接の練習をする。

映像の最後にはトリが機転を利かせ「引っかけ問題。養護施設の庭に木はあった?」と質問。「覚えていない」と答えるロキタに「よかった。木も庭もない」とトリが返すと、思わず二人からは笑顔があふれ、つかの間の幸せな空間が流れる。

本作で描かれているトリとロキタの揺るぎない“友情”について、リュック・ダルデンヌ監督は「私たちはこのふたりの主人公を小さな男の子と思春期の女の子という独立した“人間”として観てもらいたいと思いました。“ある移民のひとつのケース”ではなく、アフリカからやってきた黒人であるふたりの人生がこの映画で描かれているのです。そうすることで、ある日、道端で黒人に会っても、映画を観た方々はトリとロキタのことを想い出し、彼らに対して恐怖心や憎しみではなく“友情”を感じていただけるのではないか」と、思いを明かしている。

「トリとロキタ」は、アフリカからベルギーのリエージュへ流れ着いたトリとロキタの物語。トリはまだ子どもだがしっかり者。10代後半のロキタは、ビザがないために正規の職に就くことができない。祖国にいる家族のために、ロキタはドラッグの運び屋をして金を稼ぐ。偽りの姉弟として生きるふたりは、どんなときも一緒。年上のロキタは社会からトリを守り、トリは時おり不安定になるロキタを支える。そしてロキタは、偽造ビザを手に入れるために、さらに危険な闇組織の仕事を始める。他に頼る者のいないふたりの温かな絆と、それを断ち切ろうとするかのような冷たい世界が描かれる。

【作品情報】
トリとロキタ
上映中
配給:ビターズ・エンド
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