「1年目から通用する男」吉田正尚の原点は福井に 中学時代の教え、とにかくスタートを大事に

オリオールズ戦の6回、打席を待つレッドソックス・吉田正尚=ボストン

 高みを目指して、たどり着いた舞台でも、野球に対する姿勢が変わることはなかった。3月30日(日本時間31日)の米大リーグ開幕戦。真新しい背番号7のユニホームに袖を通したレッドソックスの吉田正尚選手(福井県福井市出身)は「(試合前のセレモニーで)米国の国歌を聴いてジーンとくるものがあった」と感動をかみしめた。

 吉田選手をこれまで指導した関係者はみな口をそろえて言う。「吉田が1年目で通用しなかったことはない」。その原点は福井での野球人生にある。中学硬式野球の鯖江ボーイズ時代、指導者から「とにかくスタートを大事にしなさい」と教えられてきた。1年目、1試合目、第1打席、1球目。1がつくすべてのものを突き詰めるように、と。敦賀気比高校、青山学院大学、プロ野球オリックス、いずれも1年目から結果を残してきた。

 「環境が変わっても自分のやるべきことをしっかりやっているだけ」。どのカテゴリーでも1年目から活躍できた理由について吉田は淡々と答えるが、その活躍を支えてきたのは徹底した準備にある。

 昨年12月初め。大リーグ移籍に向けたポスティングシステムはまだ公示されていなかったが、吉田の中ですでに勝負は始まっていた。「速球勝負の投手が多く、当たれば日本よりも打球は飛ぶ。(カブスの鈴木)誠也から投手の傾向はすでに聞いている」と話していた。

 舞台が変わってもスタイルは同じだ。「仕掛けるという意味では迷いがないように心がけて(打席に)入る」。言葉通り、開幕戦のオリオールズ戦では一回の第1打席のファーストストライクからフルスイングした。

 受け身にならず自ら結果をつかみにいく姿勢はすぐさま数字に表れた。デビュー戦で大リーグ投手の速球にも対応し、2安打1打点。最高峰の舞台でも通用することを1試合で示した。

 1年目の目標はもちろんワールドシリーズ制覇だ。「必死に準備してプレーすることしか僕はできない」。福井から初めて海を越えたメジャーリーガーの、頂を目指す戦いが始まった。

⇒春の高校野球「福井市長旗」など福井県で4大会、速報も

© 株式会社福井新聞社