<社説>放課後スポーツ体罰 「指導」ではなく「暴力」だ

 沖縄本島中部の公立小学校の放課後スポーツ活動で、男性監督が児童に体罰や暴言を加えていた疑いがあることが明らかになった。体罰は学校教育法で禁止されている。部活動や放課後スポーツ活動は教育の一環であり、体罰は決して許されない。社会全体でそのことを再確認すべきだ。 保護者によると、練習中に男性監督が威圧的な言葉を使って指導していたほか、頭を拳で殴ることもたびたびあったという。試合に負けた時には、大勢の前で叱責(しっせき)したこともあった。

 人権侵害の行為である体罰や暴言といった暴力行為を「指導」と称して正当化してはいなかったか。勝利至上主義から抜け出せず、周囲もそれを容認してはいなかったか。指導者をはじめ児童生徒に関わる全ての大人が自らを省みてほしい。

 今回の指導者は3月に競技団体から厳重注意を受けたというが、この競技団体は公表しない意向だ。調査がどのように行われ、どの行為が処分に当たるとして認定されたのか。どのような再発防止策を講じたのか、明らかになっていない。指導者一人の処分だけに終わらせず、体罰防止を徹底するためにも競技団体は事実関係を公表し、教訓として共有しなければならない。

 体罰を受けた児童の保護者らは、学校側にも体罰や暴言について訴えていたが、学校側は事実関係を把握していなかった。「放課後は所管外」というのが理由だ。

 中高の部活動のように活動している小学校の放課後スポーツ活動が、教育委員会の所管外で済ませてしまっていいのか。学校側が貸した施設で、学校教育法で禁止されている体罰が行われ、その体罰によって児童が心身ともに傷つく状況を放置していいはずがない。所管外だったとしても、児童の健全育成の観点から踏み込んだ対応が求められる。

 本年度からは、中学校の部活動の地域移行が本格化する。部活動を地域の団体や民間事業者に委ねた際、学校側がどのように関わり、体罰防止を浸透させていくのか。県教育委員会は2013年に「体罰防止ハンドブック」を作成しているが、小学校の放課後スポーツ活動も含めたハンドブックの見直しなど、取り組みを強化すべきだ。

 日本スポーツ協会が暴力パワハラ問題で設置した窓口への相談件数は、22年度は過去最多の300件超となる見通しだ。県内では21年、当時の高校2年生が所属する運動部の顧問から執拗(しつよう)な叱責を受けて自ら命を絶った。二度とあってはならない悲劇だ。

 スポーツ指導における体罰や暴言、ハラスメントなどの問題は今も根深い。日本スポーツ協会などが13年に「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を発出してから10年となる。体罰や暴言は明らかな違法行為であり、人権を侵害する行為であることを改めて認識すべきだ。

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