新年度始動

 三振、被安打、被本塁打に失点、好機での凡退…失敗の数だけを集めて大谷翔平選手の球歴が語られるIT関連企業のCMがある。最初は何が始まったのか分からず、意味が分かってあまりの格好良さに思わずゾクッと鳥肌が▲負けて泣いた数は「秘密」で「二刀流が無理だ」と言われた回数は数えきれず、けれども「自分で無理だと思ったことは一度もない」。画面には数字の「0」▲野球は失敗の多いスポーツだ。新しいシーズンが開幕して、彼の数字はまた動き始めている。ただし、もう誰も二刀流が無理だとは言わない▲〈失敗の数だけ成長できる〉-いいよね、あれ。同僚と話しながら頭をよぎったのはわが身の“失敗”の数々だ。間違いを書いて出した訂正記事や始末書、他紙に抜かれた回数、クレームの電話や手紙。この仕事が向いていないと考えたことは、そういえば数えきれない▲こちらには正確な記録がない。きちんとした数に直面していたら絶望的な気分になりそうだ。肝心の成長度は「?」が消えずに、どうにか思いついた「ゼロ」は内緒…▲“例題”はこの辺で。ぜひ皆さんも試してほしい。失敗の数はまちまちでも大切な「ゼロ」や「1」がきっと誰にもある。自信や誇りを携えて前に進みたい。新年度がきょうから本格的に動き出す。(智)

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