インディカー第2戦テキサス/観客を魅了した超接近バトルをニューガーデンが制す。琢磨は不運なクラッシュ

 NTTインディカー・シリーズ第2戦テキサスの決勝レースが4月2日に開催され、チーム・ペンスキーのジョセフ・ニューガーデンが接戦を制し、昨年に続いて勝利を挙げた。

 今季初レースに挑んだ佐藤琢磨は、予選6番手を獲得するも、決勝レースでは序盤にクラッシュを喫しリタイアに終わった。

 テキサスの1.5マイルオーバルでのシリーズ第2戦は凄まじいレースになった。

 インディカーならでは、20~24度の急なバンクを持つテキサス・モータースピードウェイならではのスリリングなバトルを制したのはジョセフ・ニューガーデンだった。予選4番手からスタートした彼は、これでテキサスは2年連続、3回目の優勝だ。

 今回のレースに向け、インディカーは空力ルールを変更した。わずかだがダウンフォースを増やし、マシン同士がより接近した状態で戦えるようにしたのだ。

 決勝前日の予選とファイナルプラクティスの間に、外側のレーンだけを走るセッションを設け、タイヤラバーを路面に擦りつけることまで行い、目論み通りにエキサイティングなレースを実現してみせた。

 新エアロパッケージでの予選でポールポジションを獲得したのはフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレン)。2年連続テキサスでのポールポジションだ。

 そして、レース用のセッティングでもマシンから最も高い能力を引き出していたのがパト・オワード(アロウ・マクラーレン)、ニューガーデン、アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)、ロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)、そしてデイビッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMD)といった面々だった。

 彼らはレース終盤にラップ毎、コーナー毎に順位を入れ替える凄まじい戦いを披露。ドライバーたちはそうしたバトルを楽しみ、ファンは熱狂していた。
 

レース終盤はトップが次々と入れ替わる展開に

 
 トップグループで戦っていた中でもオワードとニューガーデンが主導権を握っていた。ゴールが間近となった彼らはサイド・バイ・サイドのまま走り続け、そのままゴールに雪崩れ込むことと見られた。どのタイミングでどちらがどんな動きを見せるのか?

 固唾を飲んで見守っていた中、ゴール前2周でグロージャンがターン2で単独クラッシュ。フルコースコーションとなり、そのままレースは終了した。

 イエローが出された時点で前にいたニューガーデンが勝者に、僅かに後方を走っていたオワードが2位、彼ら2台のすぐ後ろにつけていたパロウが3位となった。

 NASCARなら赤旗を出してレースを止めるところだ。インディカーもつい最近までは無理やりにでもレースをグリーン下で終わらせようとしていた。しかし、インディカーは本来レースがあるべき姿に戻し、そういう作為的なことはしないよう姿勢を変えたようだ。

 あと2周、オーワードとニューガーデンのバトルが続いたら、それは最高だった。しかし、意外なタイミングで結末を迎えたレースとなっても、興奮したファンはウイナー、そしてバトルを戦ったドライバーたちに賞賛を送っていた。
 

サイド・バイ・サイドで争うニューガーデンとオワード

 
 「今日のレースはとてもエキサイティングな、まさにテキサス!というバトルになっていた。新しい空力ルールが効果を発揮していたが、タイヤの摩耗や、コースの状態など、様々な要素が絡み合って実現されていたエキサイティングバトルだったと思う」

「私はタイヤが摩耗し、マシンのコントロールが難しくなるタイプのレースが好きだ。グリップが低くなってもマシンをコントロールし続ける。そういうスキルが試されるレースはおもしろいものになる」とウイナーのニューガーデンは語った。

 昨年のレースでは、最終ラップにチームメイトのスコット・マクラフランをパスして優勝したニューガーデン。その時の彼のマシンのスポンサーがPPGで、今年はレースの冠スポンサーにPPGがついた。そして、そのレースで見事優勝を飾って見せたのがニューガーデンだった。

 オワードは、「パスするタイミングが最も大事と考え、最終ラップに仕掛けることに決めていた。しかし、その2周前にイエロー。あれで勝利のチャンスが吹き飛んだ」と悔しがっていた。

 しかし、開幕から2戦続けての2位フィニッシュをポジティブに捉え、「僕らのマシンは第2戦でもとても速かった。チームの頑張りがパフォーマンスに反映されている」とも話していた。

 3位でゴールしたパロウは、「2台が並んで戦うことはできたが、3台並ぶことは不可能だった。でも、こんなにサイド・バイ・サイドのまま抜いたり抜かれたりするインディカーのレースは自分にとって初めて。とても楽しめた」とコメント。

 超接近戦が続いたレースではアクシデントも発生した。

 その最初が47周目の佐藤琢磨(チップ・ガナッシ・レーシング)によるものだった。

 タイヤを摩耗し切って大幅にスピードを落としていたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)に急接近したタイミングが悪く、後方にいたデブリン・デフランチェスコ(アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート)が2台のインをズバッと差したため、パワーに追突することを避けようとした佐藤はよりアウト側のグリップのほとんどないレーンに押し出される形となってクラッシュした。

「慎重なセッティングでのスタートで、タイヤをセーブしながら走っていう段階でした。予選6番手からポジションをいくつか落としての走行となっていましたが、それは予定通りというか、全然気にしていないことでした」

「むしろ、スティントの後半を迎えて自分のラップタイムは上位陣と同じか、彼ら以上の速さになっていたので、あそこからポジションを挽回して行けると考えていましたし、ピットストップ後にはさらに上位へと行けるはずでした」

「それだけに本当に残念なリタイアになりました。良いマシンを準備してくれたクルーたちに申し訳ない気持ちです」と琢磨は話した。
 

今季初レースは悔しい結果に終わった佐藤琢磨

 
 インディカー参戦2年目のマルーカスが、とても冷静な戦いぶりを最後まで保っての4位。ディクソンは終盤土壇場にスピード不足に陥っていたが、今回が通算194回目のトップ5フィニッシュとなる5位。伝説のドライバー、マリオ・アンドレッティの記録を抜き、ディクソンは歴代最多のトップ5フィニッシャーとなった。

 開幕戦ではホンダエンジンを使うマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が優勝したが、第2戦はシボレーエンジンユーザーがワンツーフィニッシュ。ホンダとシボレーの勝利数は1対1のタイとなった。

 まだ2戦を終えただけだが、ポイントリーダーはオワード。2番手は開幕線ウイナーだが今回は1ラップ遅れの8位だったマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で、3番手は開幕戦が3位、今回が5位のディクソン。

 今日勝ったニューガーデンはランキング4位につけ、今日3位だったパロウがランキング5位につけている。

 次のシリーズ第3戦は一週末のインターバルの後、カリフォルニア州ロングビーチのストリートで行われる。

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