ウクライナ侵攻1年 経済や精神面に影響 9割 安保 防衛強化と対話優先交錯

 ロシアのウクライナ侵攻から1年を前に、長崎新聞社が双方向報道窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)登録者に現在の思いや考えを尋ねたところ、回答者190人中、経済面や精神面の影響を感じる人が約9割に上った。侵攻を「自分事」と捉える人が多い傾向が浮かぶ。日本の安全保障を巡っては、軍備増強による防衛力強化を求める声と、対話を軸とした外交努力を優先すべきだとの意見が交錯した。

■ 惨状つらい 

 アンケートは2月10~17日、▽日常生活で感じる戦争の影響▽日本の安全保障に対する考え方-などについて選択方式と自由記述方式で質問。県内186人、県外4人が回答を寄せた。
 ウクライナの戦争について165人(87%)が「影響を感じる」を選び、食料や生活用品、光熱費などの価格上昇を挙げる人が目立った。西海の60代農業男性は「農業資材の高騰」、佐世保の30代公務員女性は「できるだけ暖房を使わないよう部屋の中で着込む」と書き込んだ。戦争が長引き、民間や軍の犠牲者が増え続ける中、「ニュースを見るたび命の大切さを感じる」(長崎・70代無職男性)「惨状のシーンを目にすると心情面でつらい」(大村・60代会社員男性)と、心理的な影響を訴える声も少なくなかった。
 長崎の50代会社員女性は「日本でも防衛に関する考え方が変わった」と記述。ロシアのウクライナ侵攻や核使用の威嚇、中国の軍事力強化など国際情勢の緊迫化を背景に、複数の人から同様の声が聞かれた。

■ 現在の問題

 日本の安全保障への考え方の質問では、政府の防衛費増額や反撃能力(敵基地攻撃能力)保有などの方針を巡り賛否は割れた。雲仙の60代無職男性は「強力な軍事力とそれを使用するための憲法改正が抑止力になる。きれいごとは通用しない」とする一方、長崎の60代パート女性は「抑止力として防衛を強化すればするほど、他国も警戒して強化し逆に狙われる」などと不安視。ウクライナへの攻撃や、北朝鮮のミサイル発射などを受け「日本に核シェルター普及を」との意見も複数あった。
 その他、五島の20代公務員女性は「日本はエネルギーと食料の自給率を上げ自立しなければ、生き残れないと危機感が募った」。被爆3世という長崎の20代女性は「核兵器をこんなに“現在の問題”と考えたことはなかった。今起きていて、これから起こるかもしれない脅威だと感じる」と明かした。
 戦争終結時期については「分からない」が全体の6割。「両国の対話がなく、仲介できる国もなく、世界が二つに分裂しているよう」(長崎・50代自営業女性)「ウクライナへの武器供与は正解か分からない」(長崎・50代会社員女性)などと、戸惑いの声が寄せられた。(三代直矢)

 登録者へのアンケートは世論調査とは異なり、多様な意見を聞き取るのが目的です。県内のウクライナ避難民へのメッセージの一部は、避難されている方々に伝えました。ご協力ありがとうございました。

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