特集 みんなで考えるSDGsの日

 3月17日の「みんなで考えるSDGsの日」を前に長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)で海の環境保全について取り組みや思いを募集すると、団体や個人から多くのコメントが寄せられた。一部を紹介する。

SDGsのゴール14のロゴ(国連提供)

◎「感謝の気持ちで」「子どもたちのため」 海岸清掃 ワークショップ 個人でも

 東彼川棚町のまちづくり団体「Kujaku Peace」(前平泉代表)からは「海は長い間、海の生き物や人を育んできました。感謝の気持ちで守っていきたいです」とメッセージが届いた。2019年から同町の小串郷湾や大村湾で海岸に漂流するペットボトル、プラスチック、金属、漁具類などを回収し、その様子を交流サイト(SNS)で発信。活動の呼びかけにもSNSやLINEを活用しているという。

海岸に打ち上げられたペットボトルなどのごみを集める「Kujaku Peace」のメンバー=1月、川棚町小串郷の海岸(同団体提供)

 「上五島のきれいな海を未来の子どもたちのために残していきたい」と活動しているのは、新上五島町の「くじられんごう」(谷村康弘代表)。海岸の清掃やワークショップなどを年に十数回開いている。メンバーは20人。長崎大水産学部の教授が顧問を務め、島外のアドバイザーも6人いるという。「島だからできる海ごみ対策、地球温暖化対策を地域の皆さんと取り組んでいく」 西海市大島町のNPO法人和祝(中村和樹代表理事)は「自然環境のことを考えられる大人になってほしい」と学童保育で環境問題に取り組んでいる。夏休み期間を除き、地元の大釜海水浴場を毎月清掃。「(子どもが清掃を始めて)1年が過ぎる頃には日本だけではなく世界中の国からいろんなごみが流れ着いていることを知り、『ごみは自分たちで持ち帰るんだ』という習慣が身に付いているように思う」と伝えてくれた。
 個人で始めた取り組みが地域に広がった事例も。吉住栄重さんは平戸市にUターン移住後、美しかったはずの海が「漂着ごみで荒れ果てた」様子が気になった。7年程前から週1回のペースでコツコツと地元の飯田浜を清掃。昨夏からは「地域の自治会を含めて協力していただけるようになった」。次第に地域の子どもや帰省客、釣り客の姿が戻ってきたという。
 海のレジャーを楽しんだ後は清掃をして帰るという声も複数。佐世保市の九十九島で釣りや海水浴、キャンプをしているという男性は「ゴミ袋いっぱいに持って帰ります」。長崎市牧島町でクロメジナを釣っているという男性も「周りの清掃も行う。来たときより美しくを心がけている」。

◎「スポGOMI」「SNSアプリ」 新たな発想 活動広がる

 「スポーツとして楽しく」「アプリを使って励まし合いながら」。そんな新しい発想の環境美化活動が少しずつ広がっている。
 2月中旬、ごみ拾いを競技化した「スポGOMI」の世界一を決めるW杯が今秋、日本で開催されることが発表された。スポGOMIは、制限時間内に定められたエリア内で拾ったごみの量と質(種類)でポイントを競う。
 県内でも自治体や企業が開催。長崎国際テレビ(長崎市)は「スポGOMI in NAGASAKI」として2021年から長崎、佐世保、五島など県内各自治体の海岸で大会を開いている。担当者は「SDGsのために何かをしたいという声と同時に、何をしたらいいのか分からないという声もあって始めた」と語る。
 参加者は家族連れや地元の中高生が多く、「ボランティアは初めて」という人も目立つ。担当者は「楽しく地域貢献ができると好評。毎回のように参加してくださる方もいる」と手応えを感じている。
19年には高校生が日本一を競う「スポGOMI甲子園」が始まり、22年7月には平戸市で初の県大会が開かれた。

スポGOMI大会と高校生向けのスポGOMI甲子園県大会が開かれた平戸市川内町の千里ケ浜海水浴場。漂着ごみを 拾う参加者=2022年7月17日

 スマートフォンのアプリを使った活動も広がっている。長崎市北部の40代女性は今年に入って、ごみ拾い活動を「見える化」するSNS(交流サイト)アプリ「ピリカ」を活用しながら自宅周辺の掃除を始めた。
 きっかけは同市が「ピリカ」と連携して1月23日に開設した専用サイト「みんなできれいながさき」の存在を知ったことだった。
 自宅近くの県道は交通量が多く、車からポイ捨てされたと思われるペットボトルやたばこの吸い殻が目立っていた。近くには川があり、「海に流れていくことも気がかりだった」。
 女性は幼い息子と一緒にごみ拾いをして、活動をピリカに投稿してみた。すると、アプリでつながっている人たちが次々に「ありがとう」ボタンを押してくれた。女性は「普通にSNSに何か書き込んでも『いいね』は10個くらい。でもピリカでは毎回50くらいの『ありがとう』をもらっている。励みになる」と声を弾ませる。
 同市廃棄物対策課の担当者は「市民の活動につながったのはうれしい」とし、「多くの人が環境美化活動は正しいことと分かっていると思う。ただ一歩進んで『楽しい』『格好いい』などに意識が変わると、当たり前のこととして取り組んでもらえるようになるのではないか」と話した。

◎生徒と先生2人で通学路きれいに 諫早・小野中3年高木さん「将来は農家になりたい」

 受験が1月に終わり、先生から卒業までに何をやりたいかを聞かれた諫早市立小野中3年の高木涼華さん(15)は即答した。「通学路のごみがずっと気になっていた。だから学校の周りをきれいにしたい」
 特別支援学級に通っていた高木さん。担当の田川尚子教諭とマンツーマンの授業も多かった。2月に入ると、週2回のペースで田川教諭と一緒に学校周辺のごみを拾った。
 「特に自動販売機の近くにごみが多くて」と高木さん。ペットボトルや空き缶だけでなく、弁当の容器やごみが詰まった袋、たばこの吸い殻なども散乱していた。拾ったごみのこと、感じたことを毎回、日誌に書いた。学校周辺は美しい田園地帯で「きれいな環境を守りたかった」。
 田川教諭は高木さんの提案をうれしく受け止めた。2020年秋、高木さんの1学年上の生徒たちはコロナ禍のため、修学旅行の行き先を関西方面から対馬市に変更。同校の矢川豊彦校長は対馬市の学校に赴任した経験があり、「地元の方にお願いして受け入れてもらった」という。

卒業を控えた2月、週2回のペースでごみを拾った高木さん(左)と田川教諭=諫早市小野町、市立小野 中

 生徒は浅茅湾でシーカヤックを体験後、一般社団法人「対馬CAPPA(カッパ)」から環境について講義を受けた。田川教諭は一緒に聞いていて、自販機のそばに何げなく置いたペットボトルや空き缶などが風で飛ばされ、最終的には海にたどり着き、環境を汚しているという説明が印象に残っていた。「海のごみは国境に近い地域だけの問題ではない」と感じ、「戻ってから何かできないか」と考えていた。
 中学生活の最後の時期に「先生とごみを拾ったのはいい思い出になった」という高さん。14日に卒業式を迎え、4月からは県立希望が丘高等特別支援学校(諫早市)に進む。将来の夢を尋ねると、「農家になりたい。だから希望が丘では農芸コースに進みたい」と話した。

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