“往診”でペットと飼い主の支えに 高齢化にも対応 静岡県内でも進む新たな動物医療

近年、医療技術の進歩などでペットの平均寿命が急速に延びています。静岡県清水町の動物病院では、県内でもいち早く訪問診療を始め、高齢のイヌやネコの負担を減らすことにつながっています。

イヌとじゃれあっているのは、ハッチどうぶつクリニックの院長で獣医の松居裕介さん。3月31日、清水町内でイヌを飼っている家に“訪問診療”にやって来ました。3月から始めたばかりで、県内でも珍しい取り組みです。

<ハッチどうぶつクリニック 松居裕介院長>

「どの位置を触った時ですか」

<往診先の飼い主>

「そこ触ったら。今言わない?」

トイプードルのメイちゃん。痛みがあるのか、右足をあげた状態で歩いているといいます。

<ハッチどうぶつクリニック 松居裕介院長>

「何か足の裏に刺さったりしてないか見て、なさそうなのであとはレントゲンで骨が折れてないか確認して。折れてなければ内科的な治療で治るはず」

メイちゃんは14歳、人間でいうと72歳。イヌやネコは7歳から老化現象が起こり、腎不全や白内障など病気にかかりやすくなるといいます。病院への移動も負担となります。

<ハッチどうぶつクリニック 松居裕介院長>

「年齢があがってくると、若干のストレスに対する耐性が落ちてくるので、病院での待ち時間や車での移動で、何日か経って体調が悪くなったりということが出てきやすい年齢になってくる」

近年、医療技術の進歩などでイヌやネコの平均寿命は急速に延びています。ペットフード協会などによりますと、イヌの平均寿命は2011年には13.85歳でしたが、2021年には14.65歳でこの10年間で0.8歳延びています。ネコも、2011年には14.39歳でしたが、2021年には15.66歳、1.3歳も延び、ペットも高齢化が進んでいます。

訪問診療は高齢のペットの負担を減らすだけでなく、飼い主にとってもうれしいサービスです。

<飼い主 土屋純子さん>

「(病院に行って待つ時間が)1日の時間の中で大変な時間を割くことになるので、往診に来ていただければ時間の短縮になるのでいい取り組みだと思う」

訪問診療ではレントゲンの撮影や手術はできませんが、血液の採取、注射での薬の投与などその場で治療もできます。松居院長が“訪問診療”を始めたのは3月。飼い主からのある相談がきっかけだったといいます。

<ハッチどうぶつクリニック 松居裕介院長>

「大型犬を飼われている飼い主さんで、なかなか連れてくるのが大変なので、往診ってできますかと相談を受けた」

飼い主の負担を減らしたいという想いから始めた訪問診療。さらに、松居さんはオンライン診療も取り入れています。

<ハッチどうぶつクリニック 松居裕介院長>

「またちょっと血尿が出ちゃったよというのを画像で送ってくれたりとか」

ちょっとした心配事から病院が閉まっている深夜の緊急事態まで、チャットアプリを使って無料で診療をしています。

<ハッチどうぶつクリニック 松居裕介院長>

「今後、往診というスタイルを皆さんに知っていただいて、選択肢としてあがってくるのが今の目標です」

平均寿命が伸び続けているいま、訪問診療は病院に行きたくても行けないイヌやネコ、飼い主の支えになりそうです。

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