「過去9回起こり方はバラバラ 南海トラフも…」第一人者が警鐘鳴らす「心の油断」【わたしの防災】

「首都直下地震」や「南海トラフ巨大地震」にどう備えるのか。災害研究に長年携わってきた第一人者が3月に講演し「災害が大きくなるのには理由がある」と訴えました。

<関西大学 社会安全研究センター長 河田惠昭特任教授>

「過去9回、マグニチュード8以上の南海トラフ巨大地震では9回とも起こり方がバラバラ。次も過去のパターンでは起こらないと考えなければいけない」

南海トラフ巨大地震など、次に起きる災害について警鐘を鳴らすのは、防災研究の第一人者で関西大学の河田惠昭特任教授です。河田さんは3月の講演会で、大きな災害が起きる度に新たな課題が浮かび上がってきた歴史を説明しました。

<関西大学 社会安全研究センター長 河田惠昭特任教授>

「まず100年前の関東大震災。死者10万5000人の90%が火災で亡くなりました。広域延焼火災です。でも阪神・淡路大震災で5500人が直後に亡くなったんですが、火災は500人で、その10倍の5000人が古い木造住宅の全壊、倒壊の下敷きになって亡くなりました。その時に初めて、地震が起こった時に古い木造住宅が凶器になると分かりました」

過去の地震では、激しい揺れに「火災」や「住宅倒壊」といった別の理由が加わることで災害が大きくなっています。12年前の東日本大震災で起きたのは「津波」でした。

<関西大学 社会安全研究センター長 河田惠昭特任教授>

「あの東日本大震災で第1波が早くやってきた岩手県沿岸でも、地震の後、約30分の時間があったんです。必死に避難していただいたら、ほとんどの方は助かっていたんであります。なぜ避難しなかったか。一番大きな理由は仕事がある。気象庁の大津波警報は当たらない。海岸に5m、6mのコンクリートの防潮堤があるから大丈夫だ。それで避難しませんでした」

災害を大きくした理由の1つに「心の油断」がありました。

では、私たちが住む静岡を襲う南海トラフ巨大地震では何が起きるのでしょうか。

<関西大学 社会安全研究センター長 河田惠昭特任教授>

「大きな津波の来る所は例外なく震度6弱、6強の揺れが1分以上続くんです。1分近く揺れていたら(家具は)全部倒れる。家の中がぐちゃぐちゃになってしまって簡単に外に出られないことになると、現実はそういう制約条件になっている」

南海トラフ巨大地震では、静岡県内にはわずか数分で巨大な津波が来ると想定されています。高齢化が進み、避難に支援が必要な人が増えていることもあり、河田特任教授は事前に考えておかないと「逃げ遅れる」と指摘します。

<関西大学 社会安全研究センター長 河田惠昭特任教授>

「関東大震災100年でこれからどうする?と考えた時に、100年前と違ってなぜ被害が大きくなるのかメカニズムが分かってきました。あとはそれを実行するがどうか。実行できなくて後から『あの時やっておけば良かったね』なんてことにとならないように私たちの世代が頑張らなければいけないと思っています」

100年前の関東大震災では「火災」。阪神・淡路大震災では「住宅倒壊」。東日本大震災では「津波への心の油断」が災害を大きくしました。日本で起きる災害は「天災」ではなく「社会災害」だと河田特任教授は指摘しています。わずか数分で津波が襲う南海トラフ地震。「逃げ遅れ」がないように備えが必要です。

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