情報収集、共有の不足指摘 検証委委員長が証言 那須雪崩事故 第4回公判

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭ら3人の第4回公判が5日、宇都宮地裁(瀧岡俊文(たきおかとしふみ)裁判長)で開かれた。県教委による事故の第三者検証委員会で委員長を務めた戸田芳雄(とだよしお)氏が検察側証人として出廷。事前の地形や気象の情報収集不足や訓練内容のあいまいな変更、情報共有が欠けていたことなどを問題点として指摘した。

 在宅起訴されたのは、講習会の責任者や引率者だった猪瀬修一(いのせしゅういち)(56)、菅又久雄(すがまたひさお)(54)、渡辺浩典(わたなべひろのり)(60)の3被告。

 戸田氏は学校の安全教育の専門家。検証委員会は17年10月の最終報告書で、県高校体育連盟登山専門部などの「危機管理意識の欠如」が事故の最大の要因だったと結論付けた。

 戸田氏は証人尋問で「学校の教育活動は生徒の安全確保が大前提にある」と強調。その上で講習会開催に当たり、大雪注意報の発表といった気象情報や急斜面の場所など地形の下調べが不足していたと証言した。

 那須岳登山から変更した雪上歩行訓練の内容や行動範囲の設定が3被告間であいまいなまま実施され、他の参加生徒や教諭に十分に共有されていなかったと指摘した。

 講習会の責任者だった猪瀬被告は事故当時、現地の本部で待機しており、「安全確保に従事する立場にない」と主張している。見解を問われた戸田氏は「組織のトップとして円滑な運営のために全てに配慮すべきだ。関知しないのはあり得ない」と批判した。

 死亡した生徒らの班を引率した菅又被告は公判で、生徒が安全な訓練範囲外の斜面を登ったために雪崩に巻き込まれたと主張。この点について「教員には毅然(きぜん)とした態度で命を守る責任がある。生徒が行きたいと言っても追随するのは安全教育にあってはならない」と述べた。

 講習会では教員が互いに協力する責任があるとし、「他校の生徒も守らないといけない」と語った。次回公判は12日で、雪崩の事故現場に駆け付けた救助隊員らの証人尋問を行う予定。

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