キヤノン、SPADセンサー搭載のレンズ交換式超高感度カメラを開発。暗闇でも鮮明なカラー撮影が可能[NAB2023]

キヤノンは、世界最高画素数の約320万画素1.0型SPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサーを搭載したレンズ交換式超高感度カメラ「MS-500」の開発を発表した。SPADセンサーの特長である暗視性能に高い望遠性能を有する放送用レンズを組み合わせることで、高度監視用途への活用が期待されている。世界初のSPADセンサー搭載カメラとして、2023年中の発売を目指しているという。

1.0型SPADセンサー

現在開発中の「MS-500」は、低ノイズを特長とする1.0型SPADセンサーを搭載し、暗闇でもフルHDの鮮明なカラー撮影が可能。加えて、超望遠撮影を揃えるキヤノンの豊富な放送用レンズとの組み合わせにより、遠方の暗所撮影においても被写体を正確に捉えることができる。たとえば、夜間の港湾監視において、数km先の船舶を発見するだけでなく、船体の種類の確認まで行えるなど、高度な監視を実現可能という。

夜間の港湾監視イメージ(右:望遠撮影時)

現在、カメラで広く採用されているCMOSセンサーは、ある一定時間に画素に溜まった光の量を検出する「電荷集積」という仕組みを採用している。蓄積された電気信号を読み出す際、ノイズも混在するため、特に暗所撮影において画質劣化に繋がる課題をもつ。

一方、「MS-500」に搭載するSPADセンサーは、画素に入ってきた光の粒子(以下、光子)を数える「フォトンカウンティング」という仕組みを採用。画素に光子が1つでも入ると、瞬時に約100万倍に増倍して大きな電気信号を出力が可能。これら一つひとつの光子をデジタルに数えることができるため、読み出しの際にノイズが発生しないことを大きな特長としている。

これにより、「MS-500」は、星の出ていない闇夜のような暗い環境下でも、わずかな光を正確に検出し、被写体を鮮明にカラー撮影することを可能としている。レンズマウントは、放送用レンズで主流のバヨネットマウント(BTA S-1005B規格準拠)を採用。光学性能に優れたキヤノンの豊富な放送用レンズを活用できるため、数km先の被写体も認識可能な撮影を実現しているという。

なお本機は、2023年4月15日から4月19日まで米国・ラスベガスで開催される放送機器展示会「2023 NAB Show」の同社ブースにて展示予定。

© 株式会社プロニュース