バルサの沖縄アカデミーキャンプでMVP 安次富大鐘(アミークス小3年) 夢はW杯優勝「マラドーナ、ペレ超える」

 【北谷】昨年、日本国内でも盛り上がりを見せたサッカーのワールドカップ(W杯)。北谷町在住の安次富大鐘(だいしょう)(8)=アミークスインターナショナル小3年=は、経験者なら誰しもが憧れるW杯の舞台に立つことを本気で目指している。2022年8月には世界のトップクラブチーム「バルセロナ」が開くアカデミーキャンプでMVPに選出されるなど、今後の活躍が期待される選手だ。「マラドーナやペレのような偉大な選手たちを超える」と夢を膨らませる。

 サッカーを始めたのは3歳8カ月の頃。通っていた保育園の近くで開かれていたサッカースクールを楽しげに眺めていたのがきっかけだ。父の強詞さん(50)が「やりたいか」と尋ね、二つ返事で「やりたい」と答えた。しかし練習中、時には見学している父のもとへ「やりたくない」と逃げ出すこともあった。その度に「大丈夫、大丈夫」と強詞さんに笑って追い返され、続けていると次第に上達した。

 「同世代がボールに集まっても、1人だけ離れた位置からボールの出どころをうかがうようになった」と語るのは、サッカースクール「ボアソルチ」の喜久村優監督。基本とされる、ボールを止める、蹴る技術にも太鼓判を押す。

 サッカーを始めて3年がたった21年、目標を定めて取り組ませようと、強詞さんはバルサアカデミーキャンプへの参加を提案した。スペインに本拠地を置くバルセロナが開催するトレーニングイベントで、ハイレベルな練習を経験できるほか、MVPに選出されればスペインで開催する練習に招待される。

 2007年から始まったキャンプは日本全国で季節ごとに開かれ、延べ1万千人が参加している。このうち、MVPに選出された参加者は40人しかいない。日本代表の久保建英(レアル・ソシエダード)は幼少期にここでMVPとなり、バルセロナ入団のきっかけをつかんだ。

 初めて参加したキャンプは、安次富にとって経験のない練習法や、サッカーに情熱を注ぐ同世代との出会いなど、さらにサッカーにのめり込むきっかけになった。負けず嫌いの性格も相まってキャンプには参加し続けた。

 そのうちめきめきと頭角を現すようになると、22年4月には世界のバルサアカデミーチームが参加するバルサアカデミーU8W杯に出場。6試合7得点の活躍で注目を集めた。

 同年8月、自身4度目となるキャンプは県内で行われた。直前に右足親指を痛め、長距離のランニングやボールを蹴る際に違和感を抱えながらの参加となった。表情を時折ゆがめることもあったが、「諦めたくない」と全日程をやり抜いた。

 事務局からMVP選出の連絡が届いたのは数週間後のことだ。強詞さんが連絡があったことを伝えると、安次富は最初、理解できていない様子だったという。これまでのキャンプと比べ、出来栄えに「悔しさしかない」との思いが強かったようだ。MVP選出について強詞さんは「キャンプでは技術面以外に、野心的であるかや努力できるかなども評価の対象としているそうだ。内面が評価されたのかな」と目を細めた。

 今秋にはMVP獲得者が集まるスペインでの練習が控え、安次富は既に興奮が冷めやらないという。「キャンプで感じた悔しさを晴らしたい」と闘志を燃やす。ただ、最終目的地はW杯に出場し、優勝することだ。

 「マラドーナもペレもW杯で優勝した。もっともっとうまくなって、僕も金のトロフィーを掲げられる存在になりたい」と今日も夢に向かってボールを蹴り続ける。

 (名嘉一心)

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