紛争の街ベルファスト 子どもたちと校長の”対話”の授業 「ぼくたちの哲学教室」予告

2023年5月27日より劇場公開される、北アイルランドのベルファストにあるホーリークロス男子小学校で行われている哲学の授業を、2年間にわたり記録したドキュメンタリー映画「ぼくたちの哲学教室」の、予告編が公開された。

予告編は、エルヴィス・プレスリーを愛するケヴィン校長と子どもたちのほほ笑ましい姿とともに、北アイルランド紛争の記憶と分断が残る街の様子が映し出される。プロテスタントとカトリックの対立が長く続いたベルファストの街で、新たな憎しみの連鎖を生み出さないために何ができるのかを考えるケヴィン校長。哲学的思考と対話による問題解決を探るケヴィン校長が、時にユーモアを交え、時に威厳を持って生徒たちに向き合う姿と、子どもたちのさまざまな表情が収められた予告編となっている。

「ぼくたちの哲学教室」の舞台は、北アイルランド紛争によりプロテスタントとカトリックの対立が長く続いたベルファストの小学校。かつて暴力で問題を解決しようとしてきた後悔と挫折から、新たな憎しみの連鎖を生み出さないために、ケヴィン校長が導き出した1つの答えが哲学の授業だった。授業では、「どんな意見にも価値がある」と語るケヴィン校長の教えのもと、子どもたちは異なる立場の意見に耳を傾けながら、自らの思考を整理し、言葉にしていく。自らの内にある不安や怒り、衝動に気づき、コントロールすることが、生徒たちの身を守る何よりの武器になるとケヴィン校長は考えている。

宗教的、政治的対立の記憶と分断が残る街での、哲学的思考と対話による問題解決を探るケヴィン校長の挑戦を映画化したのは、アイルランドのドキュメンタリー作家であるナーサ・ニ・キアナンと、ベルファスト出身であるデクラン・マッグラの2人。およそ2年におよぶ撮影期間中にパンデミックが起こり、インターネット上のトラブルという新たな問題が表面化するなど、子どもをめぐる環境の変化も捉えている。

イギリス出身のブロードキャスターであるピーター・バラカンのコメントも公開された。「ベルファストといえば、約30年にわたって内戦に近い状態が続いた街。あれから更に20年以上経ってもしこりが残る環境で育つ子供たちの心はなかなか穏やかになりにくいはずです。ケヴィン校長が小学生の男の子たちに施している極めて貴重な教育は次世代の感性に深い影響を及ぼすと思います。このような教え方は全世界で取り⼊れる価値が大いにあります」とコメントしている。

【作品情報】
ぼくたちの哲学教室
2023年5月27日(土)ユーロスペースほか全国順次公開
配給:doodler
© Soilsiú Films, Aisling Productions, Clin dʼoeil films, Zadig Productions,MMXXI

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