ブエミ、WECハイパーカーのライバルが「強さを増す」と予想。第2戦でのプジョー“復活”も示唆

 WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスで、ブレンドン・ハートレー、平川亮とともに8号車トヨタGR010ハイブリッドをドライブするセバスチャン・ブエミは、TOYOTA GAZOO Racingを追いかけるライバルメーカーが、シーズンの戦いを通して「より強くなる」と予想している。

 チャンピオンチームであるトヨタは先月、アメリカ・フロリダ州で開催されたセブリング1000マイルレースで、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組の7号車が、ブエミ/ハートレー/平川組が駆る姉妹車を2秒差で破り優勝。予選ではフェラーリ・AFコルセの新車フェラーリ499Pにポールポジションを奪われたが、決勝では他を寄せ付けない強さを見せた7号車と8号車が開幕戦でワン・ツー・フィニッシュを達成した。

 ル・マン24時間レースを4度制しているブエミは、トヨタの快勝に終わった今季開幕戦のあと、セブリングで初めてこのクラスに参戦したハイパーカーチームの多くが7ラウンドのシーズンを重ねるごとに競争力を増していくと考えている。

 トヨタの新しいライバルとなるフェラーリ、ポルシェ、キャデラック、そしてフロイド・ヴァンウォール・レーシングチームは、いずれも先月のセブリングでハイパーカークラスデビューを果たした。

 ブエミはSportscar365に対し、「最初は(ポイントを)獲得することがとても重要だ」と語った。

「1年を通してライバルたちの競争力が向上していくことが期待できる。そのため、ポイントを獲得するのはより難しくなっていくだろう。僕たちにとってもっとも重要なことは、信頼性を確保し多くのポイントを獲得するためにあらゆる機会をすべて利用することだ」

 来週末の4月14~16日に行われる第2戦ポルティマオ6時間レースに向け、ブエミはセブリングと比較してポルトガルのサーキットはより普遍的な性質を持っているため、開幕戦で苦戦を強いられたプジョーが“ゲームに戻ってくる”可能性があると示唆した。

 トヨタのライバルがポルティマオでどのように反応するかについて尋ねられたとき、彼は「プジョーやフェラーリが(開幕戦よりも)強くなっている可能性がる」と述べた。

「というのも、彼らはポルティマオで何度もテストをしている。フェラーリがセブリングでテストしたのも事実だ」

「プジョーはセブリングで(路面の)バンプに苦しんだ。だから、それに比べれば(ポルティマオの路面は)はるかにスムーズだし、彼らのパフォーマンスは良くなるはずだ」

「キャデラックとポルシェのようなチームは……ポルシェは(ヨーロッパで)テストをしていたが、キャデラックはしなかった」

 ブエミは、チームメイトのハートレー、そして今季リザーブ兼テストドライバーとなった中嶋一貴とともに2021年のWECポルティマオで優勝した。しかし、トヨタGR010ハイブリッドはハイパーカーの初年度からこのクルマの3年目となる今季を迎えるまでの間に幾度もアップデートが行われている。

「レースに勝つために全力を尽くす。勝って7号車にリードされたポイントを取り戻したいんだ。そのためにもっとも重要なのは信頼性で、最初から最後までクルマが強いことを確認することだ」

TOYOTA GAZOO Racingで平川亮、ブレンドン・ハートレーとともに8号車トヨタGR010ハイブリッドをドライブするセバスチャン・ブエミ

■第2戦の勢力図を読むのは困難

「僕たちは2年前、このクルマの非常に初期の段階で多くの問題を抱えていた」と続けたブエミ。

「基本的に、僕たちのクルマは最初にそこを走ったときよりもずっと良くなっていると思っている。でも、他のマシンと比べてどうこう言うのは難しい。過去にはセブリングで苦戦を強いられたこともあったが、最終的にはうまくいった」

「プジョーは富士やバーレーンのような非常にスムーズなコースでは、我々のチームに非常に接近していたことも事実だ。だが、セブリングではそうはいかなかった」

「僕はGR010ハイブリッドがもっと良くなることを期待しているが、他のマシンがどうなるかは予想できない」

「短いコースだから、かなりタイトになると思うよ。あのコースでGTマシンをかき分けながら走るのは、明らかにチャレンジングだと思う」

 ブエミは、ハイパーカー・カテゴリーのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)がセブリングで使用されたものと異なることも、ポルティマオの変数であると付け加えた。

 第2戦ポルティマオ、第3戦スパ・フランコルシャン、第4戦ル・マン24時間の固定BoPでは、ヴァンウォール・バンダーベル680とグリッケンハス007 LMHを除くすべてのマシンが、セブリングのときよりも軽い車重でレースに臨むことになる。

 その中ではトヨタが19kgともっとも軽量化され、次いでフェラーリ499Pが17kg軽くなる。一方で最大出力や1スティントあたりのエネルギー使用量も、クルマによって差はあるものの削減されている。

「セブリングでは特別なBoPが、ポルティマオとスパ、ル・マンでは固定されたBoPがある」とブエミ。「(セブリングとは)少し違うかもしれないので待つ必要があると思う」

「もし、次のポルティマオが好調であれば、スパとル・マンでも好調であるはずだと確信できるだろう」

「この調整によって状況は少し変わるかもしれないけど、じきにわかるよ」

2023年WEC開幕戦セブリングで2位に入った8号車GR010ハイブリッド

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