地方議員ってほんとうに忙しい?~地方議員の働き方、報酬、休日のリアル~(オフィス・シュンキ)

4年に一度の「統一地方選挙」が迫ってきました。私自身、8年前にこの選挙を経験し、その後1期だけ議員を務めさせて頂きました。民意に基づき地方議員として働かさせていただけたことで、外からでは分からなかった地方議員の「働き方、報酬、休日」といったもののあり方がリアルに分かりました。そういったことも含め、地方議員の実態に迫っていきたいと思います。

ひとくちに「地方議員」といっても、自治体の規模、近隣都市との関係などで大きく仕事も報酬も違ってきます。仕事が違えば、休日も変わってくる、が現実です。ちなみに、私は京都市西京区選出の京都府議会議員として2015年4月末日から4年間、働きました。

議員報酬だけでは、生活が難しい自治体が大半

最初に、報酬について、です。私の月額報酬は96万円でした。この京都府の報酬は、都道府県議会レベルでいうと全国3位ですから地方議員の報酬として間違いなく「高い」に位置します。

ちなみに、近隣の都市と比較してみると、人口5万人強の向日市が40万円、同じく人口10万人に足りていない長岡京市と亀岡市がそれぞれ45万円、44万円となっています。

議員報酬のみで生活できるか、を考えてみます。ここに記した報酬は素の報酬ですから、ここから、所得税や住民税などが差し引かれて、手取りとなっていきます。

平成31年2月分の私の「議員報酬明細書」をみると、25万円弱が差し引かれることになり、71万円少しが手取りとなっています。

引かれる額も大きいのですが、それでも報酬額が47都道府県で最下位となる大阪府でも月額65万円(ボーナスは別です)である都道府県議会での地方議員なら、議員専業で十分生活はできるはずですし、実際に私は議員専業で妻子3人を養う形で4年間安定して仕事をさせていただくことができました。

しかし、この「都道府県議会」と報酬が、ほぼ同じレベルの「政令指定都市」や大都市圏の議員を除き、手取り額で考えれば、先に挙げた私の選挙区の近隣都市の例にもあるように、大多数の地方議員の報酬事情は、一般に思われているような常識とかけ離れた高額なものではありません。

たとえば近隣だった「向日市」の議員が「(持っている国家資格の)社会福祉士を使った仕事をしないと、やっていけない」といわれていたのは鮮明に覚えています。

大多数の地方議員の方は、議員報酬だけでは苦しい形で生活を営むことになっているのは想像に難くないのです。

『先生』、とよばれてびっくり

次に、仕事ですが、今もはっきり覚えているのは、初仕事です。

「京都府議会議員」に選出されたのは4月12日。正式の着任は同30日。その間にあった、阪急京都線・桂駅の交番完成お披露目式典でした。

任期的には私と交代する形となった府議会議員が出席すべき式典でしたが「今後4年間は、『先生』にお願いすることになります」と、京都府の行政側からの依頼があったのです。

まず、突然、『先生』にされたのがびっくりでした。それに、来賓扱いなど人生初。

『ああ、こういうことから(議員の)勘違いが始まるんだろうな』と、正式にはまだ府議会議員でない時に呼ばれた現場で思ってました。

こういった地域の行事があるごとに、議員には案内が来ます。そこへ府民・市民の方の代表として参加するのも仕事となります。

以後、4年間、こういった案内がある正式なものや、案内のない催事も含め、年間に50回以上は「来賓」として、府内・市内・区内の催事に参加することになりました。

そして、その場では、必ず『先生』と呼ばれることにもなったのです。

一般の市民感覚からいうと、おそらく『それ仕事かい?』なのですが、だれか住民代表がその場にいる必要があるとき、「議員」はまさにその代表ですから、住民代表としてその場にいるのは、仕事といわざるを得ません。それに欠席するようだと、それは住民が参加していないのと同じになってしまうのです。

この「催事」参加と、普段の「住民の声」を拾う活動に関しては、日曜も祝日もありません。

政務活動の事務所に関しては、政務調査で地元を空ける時と事務員さんがおられる時以外、一日一度は、足を入れるようにしていました。府民相談の電話はいつくるか、分からないのですから。

その上で、阪急・桂駅に、それこそ、30分でも立つ、を日課にしました。これは、「府民の生の声を聞く」という私の政務活動の根幹ともなりました。

正月であろうが、ゴールデンウィークであろうが、土・日曜日であろうが、乗降する方はいますから、この政務活動に関しては、私は基本、休みなしの姿勢で臨みました。

ここで誤解ないようにお伝えしますが、駅立ちが仕事なのは議員に選出されてる方だけです。議員に選出されていない方の駅立ちは、仕事ではありません。

もちろん、地方議員活動の基本は、議会。ここでは、国会と違って同じく住民の選挙で選ばれる自治体の首長との二元代表制の議会に臨むことになります。

議会に入ると、所属している政党で仲間を分けるのではなく、「会派」に分かれることで仲間分けをしていきます。

これは、分かりにくいのですが、所属党派としては、国政で協力関係になくても、地方議会内の会派としては、同じ会派の一員になったりしたりもします。

ここでは、首長が行政側の代表ということになり、主にそこから出される条例案や予算案を監視し、是正させるのが議員の仕事となります。

少数会派の意見は通りにくいのが常なのですが、首長の協力を得て、その予算案の中にどうしても実現しようと考える政策を入れたければ、盛り込んでもらうことによって実現が可能となります。

たとえば、私のいた会派は2議席しかなかったのですが、どうしても私はスポーツ、それも全国的にみて京都府に決定的に欠けていた施設の充実を訴えたい、と考えました。2019年にオープンした、J1京都サンガの本拠地「京都府立京都スタジアム(名称・サンガスタジアムby KYOCERA)」に関して、内部のデザインなど、私たちの提案がかなり首長(この場合、知事)に議会を通して採用していただけたのは、少数派だからダメと思わず推した「仕事」の結果だった、と思っています。

こういった政策立案のための、管外・管内調査(この「管内」という呼び方も、議員になって私は知りました)でも、下調べも含めてかなりの時間を取ることになります。

その政策に賛同する方、一緒に調査に行ってもらえる方を見つけるのも地方議員の仕事だと思います。

たとえば、今をときめく子育て政策の兵庫県明石市に「離婚後の養育費未払い問題」で、2016年に、党派も会派も超えてFacebookで知り合いとなった東京都の区議会議員(当時)の方と2人で出かけた、というケースもありました。

取り組み方によって、『休日』はないもの

なにがいいたいのか、というと、取り組み方によれば、「地方議員に休みなんかないよ」ということなのです。

もちろん、疲れてしまっていて、催事も何も予定のない日に10時間以上寝てしまう、とかはありましたが、1泊2日の家族旅行の最中でも、調査先や行政の方と電話やメールで連絡を取り合う、というのが私だけでなく、多くの地方議員の日課になっているのではないでしょうか?

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