“N”ブランド初の全輪駆動EV『ヒョンデ・アイオニック5 N』が-30℃の北極圏でテストを実施

 WRC世界ラリー選手権をはじめ、カスタマーレーシングによるTCRシリーズなどのツーリングカーレースや各国のラリー選手権など、モータースポーツに積極的に参画しているヒョンデは、3月30日に同社の高性能スポーツブランドである“N”ブランド初の高性能量産EV『IONIQ 5 N(アイオニック5 N)』の冬季テストの詳細を明らかにし、ティザー動画を公開した。

 北欧スウェーデンの中でも北極圏に隣接するアリエプローグにヒョンデが構えるテストコースは、摩擦係数の低い氷結した路面や氷点下30℃という厳しい寒さなど、自動車メーカーが冬季テストを行うために必要な要素を網羅した施設となっている。Nブランドのエンジニアは、優れた応答性能と氷点下での安全性の最適なバランスを実現するために、アイオニック5 Nをはじめとするニューモデルを同施設に持ち込み、もっとも過酷な低摩擦条件でテストを行っているという。

 2015年のWRC参戦を機に始まったNブランドのAWD(全輪駆動)の歴史は2023年で8年目を迎え、この間に韓国の自動車メーカーは2度のワールドチャンピオン(WRCマニュファクチャラーズタイトル)を含む多くの栄誉を獲得してきた。アイオニック5 Nは、そんなNブランドにとって初めてAWDを採用した市販車となる。

 アイオニック5 Nは最適化された前後のトルク配分やトルクレート、サスペンション剛性やe‐LSD(電子制御式リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)などの要素によってコーナリング性能を強化。さらにe‐LSDを制御するシステムには“Nドリフト・オプティマイザー”というドリフト専用の走行モードが備わり、初めてドリフトに挑戦するドライバーからプロドライバーまで、あらゆるスキルレベルのドライバーがドリフト走行を楽しめるようになっている。

 さらに、このクルマははドライブモードごとにトルク配分を最適化した“Nトルク配分”を採用し、前後のホイールへのトルクレベルをドライバーが選択することが可能に。四輪すべてにさまざまな比率でパワーを配分するために“Nトルク・ディストリビュージョン”とe‐LSDが連動し、アリエプローグのような極端に低摩擦な路面状況でもEV特有の瞬間的でシームレスなパワー伝達を実現するよう設計されている。

 Nブランドは冬季テストについての情報公開に合わせてアイオニック5 Nのコーナリング特性に焦点を当てたティザー動画をYouTube上で公開した。この動画はアイオニック5 Nと2023年のWRCに参戦中のヒョンデ・シェル・モビスWRTのマシン、ヒョンデi20 Nラリー1Nがドリフト状態でランデブー走行を繰り広げるものだ。

 アイオニック5 Nは2023年7月のグローバルデビューを予定しており、これから追加情報や詳細が順次発表されていく予定だ。

■Hyundai N | IONIQ 5 N Teaser – Episode 1

「ニュルブルクリンクの鋭いコーナーで磨かれた当社のNモデルは、アリエプローグの性能試験場の鋭いコーナーと氷の表面で研ぎ澄まされ、もっとも過酷な冬の条件でも最高のパフォーマンスを保証する」と語るのは、ヒョンデのNブランド管理およびモータースポーツ部門副社長であるティル・ワルテンベルグ。彼は「アイオニック5 Nがヒョンデの広範な性能基準を完璧に満たしていることを証明し、メーカー初の量産EV NモデルとしてNブランドの成功を約束すると自負している」と続けた。
ヒョンデののエグゼクティブ・テクニカルアドバイザーであるアルベルト・ビアマンは、「当社のEVシフトは、レースで実証済みのヴェロスターN ETCRによって主導され、私たちはコンセプトEV『RN22e』によってモータースポーツ技術を公道での走行に橋渡ししようと努めた。今こそ、このすべての約束を親愛なるお客様にお届けする時であり、アイオニック5 Nはそれを実現できると確信している」とコメントした。

© 株式会社三栄