<南風>他人任せなハエたたき

 ちょっと人よりうまくできることがある。それは、店内で目当ての商品を早く見つけることだ。初めて訪れた店でも、どこに何があるかを把握し、たくさん並ぶ商品の中からジャンル→サイズ感→色味→商品名と、だんだんターゲットを絞りながら、思考よりも目から取り込む情報で見つけ出すことができる。

 相手の求めを察することも同じだ。視線や発言。その場の状況で相手が何を今求めているのかを察知して、言われる前に何かを案内したり必要なものを渡したりすることができる。

 それらは、素手でハエをたたくことに似ている。これはなぜ得意なのか分からないが、特に室内にいるハエは高確率でたたける。程よい力加減なのか大体は脳振とうを起こす。その間に外へと逃すことが多い。

 こう話すと、自分のことをよく分かっているよねと言われるが、自分一人で考えて理解しているわけではなく、常に周りの人々に「自分という人間」に気付かせてもらい、前述のようなちょっと人より優れていると思える能力も、全て周りの人に言われ初めて気づいたものだ。周囲に言われるまで自分が商品を見つけ出すのが早いと思ったことはなかったし、誰でも気付けていることだと思っていたし、みんな手でハエをたたけていると思っていた。

 長所も短所も、自分のことはいつも周りが教えてくれたし、これからもそうあってほしい。私の周りの人には「私という人間」について、たくさん教えてほしい。そんなことを言うと、他人任せだとやゆする人もいるだろうが、その言葉はもはや私にとっては褒め言葉だ。頼れる「他力」があるということは、この上ない幸せなのだから。

 春。出会いや別れがいつもより増えるこの日々に、みんないつもありがとうと他人任せなハエたたきはつぶやく。

(岩倉千花、empty共同代表)

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