栃木県議選、1票に何を託す 有権者3人に聞いた

大輪洪一さん

 栃木県議選の投開票日が9日に迫る。新型コロナ禍で落ち込んだ観光地の需要回復や医療・介護問題、相次ぐ自然災害への備えなど、県内にはさまざまな政策課題が横たわる。それぞれの立場で取り組む県民は何を思い、何を求めて1票を投じるのか。重要テーマについて有権者3人に聞いた。

【観光】那須町・大輪洪一さん 

 那須町の宿泊やレジャーなど16の観光関係施設でつくる那須地区ホテル&レジャー施設連絡協議会。会長の大輪洪一(おおわこういち)さん(53)は那須街道の渋滞や周遊バスの運行などを挙げ、「観光地が抱える課題に目を向け、拾い上げて対応してもらいたい」と選挙に期待する。

 新型コロナの感染拡大で観光客が激減した際、主に東北地方で小中学生の修学旅行誘致に奔走し、団体客の呼び込みに成功した。国や県の旅行支援が追い風となり、「那須が活気づいた」と振り返る。

 観光客が戻りつつある中、持続可能な観光地の在り方を模索する。「一時的な支援だけでなく、今後はより快適に楽しんでもらうための環境整備の充実が大切」と指摘。「地域に溶け込み、声を聞いてくれる議員を求めたい」と話した。

【医療・介護】宇都宮市・川島由美子さん

 在宅医療を支える訪問看護ステーションは体制整備が進み、直近では県内で170カ所を数える。宇都宮市陽東2丁目の訪問看護ステーション「みやの杜(もり)」の管理者川島由美子(かわしまゆみこ)さん(63)は県内の現状について「小規模事業所が多く、研修などに人手を割く余裕がない」とし、サービスの質の向上を課題に挙げる。

 新型コロナ禍では、利用者が感染することもあった。感染予防など看護師が役立つ場面も多いと考え、行政に対し「訪問看護ステーションをうまく使い、好循環を生む仕組みをつくってほしい」と求める。

 在宅医療に欠かせない介護士に対しても、能力を引き上げる施策の必要性を説き、「地域に密着し自治体単位でできることを考えてくれる候補者を見極めたい」とした。

【防災】白鴎大4年大塚小夏さん

 防災サークル「め組白鴎」で部長を務める白鴎大4年大塚小夏(おおつかこなつ)さん(21)は、交流サイト(SNS)を通じて防災知識の普及啓発に取り組む。大学がある小山市は近年、相次いで大規模な水害に見舞われたが「若者を中心に防災への意識は高くない」と感じている。

 災害対策を掲げた各候補者の公約を「安全面の向上だけでなく県民が防災に関心を持つきっかけにもなる」と歓迎。東日本大震災の被災地訪問の活動経験から、被災者目線を忘れずに支援する重要性を強調する。

 一方で「衆院選や首長選に比べ、県議選は身近に感じづらい」と本音を明かす。選挙が友人同士の話題に上ることはなく、「もっと具体的な情報があると違うのかな」。若者を含めた各世代へ、候補者の積極的な情報発信を望んでいる。

川島由美子さん
大塚小夏さん

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