水戸・谷口牧場跡地 牛舎改装、交流拠点に 市場や健康教室にぎわう

使わなくなった牛舎を活用して開かれた「縁会」のマーケット

事業継続が困難になり、使わなくなった牛舎を地域交流の拠点へと生まれ変わらせる取り組みが今月、水戸市鯉淵町の谷口牧場跡地で始まった。イベント名を「縁会(えんかい)」とし、マーケットやワークショップ、健康教室などを開き、地域の親子連れでにぎわった。主催者で兼業農家の谷口敬昭(たかあき)さん(40)は、「牛がいなくなって寂しい思いもあるが、それを振り払うぐらい人が集まってくれる場所にしたい」と今後も継続的に開催し、にぎわい創出を構想している。

谷口牧場は、谷口さんの祖父の代から始まり、父の康道さん(74)まで約60年、乳牛を飼育してきた。ピーク時は100頭を超えていたという。康道さんが体調を崩し、昨年4月に酪農をやめることを決めたことが、交流拠点への転換を図るきっかけになった。谷口さん自身は、自動車整備士として働く一方、野菜を栽培しており、酪農を継ぐことは難しいと考えた。

牛舎1棟と、放牧場を含めた敷地約1300平方メートルを「Catapult★Deck(カタパルト・デッキ)」と命名。康道さんが基礎から手作りで建てたという牛舎を、谷口さんが知人や康道さんの手を借りながら、清掃し柵を撤去するなど改装した。

メイン会場は、妊娠した牛が出産までの期間をすごしていた牛舎を活用。柱と屋根のみで、ブースの設置や人の出入りがしやすい造りだった。谷口さんはこれまで、他のバザーやマルシェで野菜を販売するなどしてきたが、出店の負担を軽減し、拠点を定めることでリピーターを確保できないかと企画した。

今月1日に開かれた縁会では谷口さんが、野菜販売で知り合った知人など17団体が、コーヒー店や野菜販売、アロマを使った虫除けスプレーを作成するワークショップ、ヨガ教室などが出店。キャンピングカーやテントも配置された。来場した親子連れはレジャーシートやベンチなどでピクニック気分を味わい、春の陽気を楽しんだ。

谷口さんは今後、年3回程度のマーケット開催と大道芸やアウトドアなどのイベント会場としての貸し出しを検討している。

谷口さんは「会場準備の過程で友人や知人の紹介で人脈が広がった。近隣の人たちにも還元できる場所にしたい」と話している。

「縁会」のマーケットを訪れる来場者=水戸市鯉淵町

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